弁証論治トレーニング㊷ 食滞胃脘証
こんにちは。
今日はとても身近な現代病・・・食べ過ぎの消化不良です。
暴飲暴食や脾胃虚弱者の飲食不節と、病歴に必ず飲食の不摂生があり発病は急です。
食生活の指導で防げることが多く、発症しても1~2日も絶食すると回復することが多いです。
中医学では、胃の気機の昇降失調により引きおこされる病証としています。

食滞胃脘証㊷(しょくたいいかんしょう)
主な症状
胃脘部の膨満感、疼痛、げっぷ、しゃっくり、吐き気、嘔吐、おなら、便が悪臭、下痢、舌苔厚膩、脈滑 など。
症状の分析
胃脘部の膨満感 → 食べ過ぎなどで消化不良になる(食積)と、胃気が下降できなくなり胃気上逆となります。
胃は「水穀の海」「太倉」の別名があります。
食べ物を受納(受け入れて)し、腐熟(初期消化)して食糜(粥状)に変化させ、降濁(小腸に送る)する一連の働きを担い、この働きを胃気といいます。
胃中に食積が停滞すると、胃気が下降できず閉塞脹満感が生じます。
げっぷ・しゃっくり・吐き気・嘔吐 → 胃気が下降できず上逆すると、気は口の方へ上がってしまいますが、胃中に腐熟途中の未消化物があるので、げっぷや口臭には酸腐臭が混じります。
食後に症状が出やすく、ひどいと未消化物を嘔吐することもあります。
ところで げっぷは噫気(あいき)・噯気(あいき)、しゃっくりは呃逆(あくぎゃく)、おならは失気(しっき)、吐き気は悪心(おしん)といいますよ。
疼痛 → 胃気の停滞ですから気滞の疼痛・・・つまり脹痛です。
便が悪臭・下痢 → 下注大腸するためです。(下注:勢いよく下り注ぐ)
飲食物を消化吸収して水穀精微を生成するには、胃と脾の働きが中心になります。
胃気は下降、脾気は上昇…と協力して身体の中心で昇降の重要な働きを担っています(中気という)。
胃気の失調は脾気の失調を招きやすく、すると脾の「運化を司る」働きも低下し水液代謝が正常に行われなくなるため、水分は大腸に降り下ってしまいます。
十分に腐熟し、小腸で泌清別濁され、大腸で便に作られないまま下痢となって逼迫して排泄される(下注大腸)ため悪臭がします。
舌苔厚膩 → 舌の実体が見えない厚い苔で、唾が糸を引くようなネバネバした感じがあります。
食積や痰湿に見られますが、ここでは胃中の濁気が上騰して現れたと考えられます。
舌苔は胃気によって生じ、臓腑の状態をよく反映します。
現在の中医学では脾を重視しますが、古代では胃気の盛衰をより重要視していました。
とはいえ、しっかり食べられるかどうか?は今も健康のバロメーターですね。
脈滑 → 脈の去来が早めで、珠がお盆の上を転がるような脈象です。
食積や痰飲、実熱にもあらわれます。
弁証・・・食滞胃脘証
立法・・・消食導滞
治療の原則は「調和」(脾胃の気機を調える)と「瀉」(食積を解消する)です、調和が重要なのです。
方剤・・・保和丸
君薬は、消食類の山査子(サンザシ)で特に肉類の消化に働きます、歯を傷めるほど酸味が強いです。
ほかに配伍されている消食類の莱菔子(大根の種)は胃気を下降させます。
神曲(しんきく)も消食類で、小麦ふすまに赤小豆の粉や中薬を混ぜて発酵させた発酵性消化薬です。
保和丸は子供やご高齢者によく使われます。

子供の身体の特徴は「脾常不足」、まだ脾が未熟で、食べ物が合わないとすぐに下痢をしたり吐いたりします。
ご高齢者は五臓六腑の働きが虚衰していることが多く、消化器官も老化してきています。
胃脘部とは
横隔膜から下、へその上までの、いわゆる「胃」のことを指しますが、噴門を含む上部を「上脘」・胃本体を「中脘」・幽門を含む下部を「下脘」と3部に分けていうこともあります。
お疲れさまでした! お付き合いいただきありがとうございました。
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