弁証論治トレーニング㊵ 小腸実熱証


こんにちは。

今回は「肝脾不和証」の弁証をしてくださった、1期生Mさんにお願いしました。

とても詳しくまとめてくださっていますよ💛

Mさんは今期から実習を担当してくださることになり、ご一緒にお仕事できるのがとても楽しみです!

M先生をはじめ卒業生の皆さんが、各方面でどんどん活躍の場を広げておられるのは、本当に頼もしく素晴らしいですネ!!


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小腸実熱証㊵

主な症状

イライラする、煩躁、不眠、のどの渇き(冷たいものを飲みたがる)、口舌に口内炎、尿が濃い、排尿困難、排尿時の疼痛、血尿、舌尖紅苔黄、脈数 など。

 

症状の分析

イライラ、煩躁 → 肝陽上亢、肝鬱化火、心火、熱性の邪気のいずれかによる影響が考えられ、神志を乱すためと考えられます。

不眠 → 肝鬱、肝火、心火、陰の虚衰(肝・心・腎)のいずれかによる影響が考えられます。

のどの渇き → 熱性の邪気、津液など陰液不足や消耗が考えられ、盛んな実熱では冷飲を好みます。

口舌に口内炎 → 「舌は心の苗」から、心に熱があることがうかがわれます。

口内炎は、熱邪が舌の経絡を灼傷して潰瘍を生じたものです。

舌尖紅苔黄、脈数 → 熱証であることがわかり、舌尖には心・肺の状態があらわれます。

数脈は一息五至以上(一呼吸で脈が5回動く・正常な脈は一息四至)です。

尿が濃い → ここまでの症状分析で、熱性の証候である可能性が高いことがわかります。

chaika357 / Pixabay

尿は、小腸にこもる熱で津液が消耗したり、熱による膀胱の気化作用の失調で少なく濃くなります。

膀胱の気血の流れが熱によって乱されると、疼痛(熱感を伴う疼痛や刺痛のこともある)や血尿を引きおこします。

熱証であることがうかがえますが、潮熱・五心煩熱・盗汗などの症状がないため、陰虚の熱ではなく実熱だとわかります。

 

では尿の症状と、そのほかの症状はどうつながるのでしょうか?

五臓では、肝・心・腎の病証の可能性を考えましたが、書かれている症状は口内炎だけで、心が最も可能性が高いといえます。

心は六腑の小腸と通じており、心の熱が経絡を通じて小腸に移り、その熱が膀胱に流れ込み尿の症状を引き起こしたと考えられるのです。

小腸の泌清別濁の作用と、膀胱の気化作用は尿の生成と排泄に深く関わります。

五臓六腑は、互いに経絡で通じる組み合わせがありますが、ほかにも生命維持や代謝活動でそれぞれがどのような関係にあるかを理解しましょう。

 

弁証・・・小腸実熱証

この病証の特徴は、尿の症状と舌(心熱)の症状が同時に見られることです。

どちらかだけなら、心か膀胱の病証になりますね。

心火の症状には他にも 顔面紅潮 がありますが、これは「心の華は顔に現れる」ことからわかります。

 

立法・・・清心瀉火・通利小便

心熱を取り除き、排尿をよくします。

 

方剤・・・導赤散(どうせきさん)

心・腎経に入る清熱涼血薬の生地黄を君薬に、心火を小腸に下降させて利尿で外泄する木通、心熱を瀉す清熱瀉火の竹葉、清熱解毒・緩急の生甘草が配伍されています。


心火は、感情の抑うつなどが化火する、辛熱温補のものを過食するなどで心熱が内盛して引きおこされることが多いです。

心(口内炎)と膀胱(尿)の症状なのに「小腸実熱」と、関係性がわかりにくいちょっと難しい弁証でしたね、お疲れさまでした~。

お付き合いいただきありがとうございました。

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