弁証論治トレーニング㉟ 気滞血瘀証
こんにちは。
今回は、医療の最前線でご活躍中の第1期卒業生・Oさんに分析をお願いしましたよー!
たくさんある症状が丁寧に分析されていますので、ぜひテスト勉強にお役立てくださいネ。
気滞血瘀証
ストレスが続く、気滞体質、老化、他の病気の慢性化などによる臓腑機能失調により、気血の流れが停滞して引きおこされる胸肋部の脹痛、ため息、固定した疼痛、固まりなどを中心とした症候群です。

主な症状
刺すような固定痛でさわるとひどく痛むが温めると痛みは緩和する、ときに胸や脇が張るように痛む、皮膚や唇が紫紺できめが粗い、舌下静脈が青黒い、舌に瘀点がある、気分が憂鬱でため息をよくつく、下痢(または便秘)、生理不順、生理前や生理中の痛み、経血に紫紺の塊がある、脈濡渋 など。
症状の分析
刺痛・固定痛・拒按・温めると緩和 → これらは血流の滞りで生じた「瘀血」(おけつ)が原因の疼痛の特徴です。
私たちが手や足をどこかにぶつけたとき、青あざができますよね? あれが最も身近な瘀血です。
痛む場所は動かず、触るとずきっと強く痛みます。(拒按とは、触られるのを嫌がる…という意味です)
温めると気血の巡りがよくなり、一時的にでも瘀血が解消されるので痛みが緩和します。
胸・脇の脹痛 → 脹れるような痛み…は気の滞りによる疼痛の特徴です。
この痛みは不固定痛で、胸・脇肋部には肝の経絡が通っています。
気の巡りは、肝の「疏泄を司る」働きが失調すると阻滞しますから、肝の経絡が通るところに脹れるような症状が現れやすくなります。
ですが、気は動き回る特性があるので不固定痛です。
皮膚・唇が紫紺 → 瘀血があることをうかがわせます。血流の停滞により十分に皮膚が営養されず、きめも粗くなります。
くすんで薄黒く感じるような色から、瘀血の停滞が原因で血が本来の循行経路を進めず漏れて(出血して)生じる瘀点・瘀斑など、紫紺色が特徴です。
舌下静脈が紫紺 → 瘀血の有無は、舌下静脈を短時間に自然にみてわかります。

瘀血がある人は青黒く怒張した感じです。健康な人でも、しばらく舌を裏返してじっとしているとうっ血して紫紺になりますョ。
舌に瘀点や瘀斑が現れることもあります。瘀点と瘀斑の違いは紫紺の大きさです。
憂鬱・ため息 → 肝の「疏泄を司る」働きが失調し気機が停滞していることをうかがわせます。
肝主疏泄には気機を調節する働きがあり、気機が正常でスムーズであることは情緒の安定・調節と深く関わります。
肝気が鬱結すると情緒は伸びやかさを失い鬱状態になりますから、ため息は鬱結した気の巡りをよくしようとする無意識の行為です。
下痢 → 肝主疏泄の働きには、脾胃の消化吸収を促進する…ということがあり、肝気鬱結では脾の「運化を司る」働きも低下し、水液が停滞しやすくなります。
すると余分に溜ってくる水液は糟粕と交じり下痢になります。
便通には大腸の気機が重要で、肝気の鬱結は他の臓腑の気機にも影響しますから、大腸の気滞を引きおこせば便は運ばれず便秘となります。
生理不順・生理痛 → 肝主疏泄の働きには、女性の排卵・月経と男性の射精の正常を、腎と協力して保つ働きがあります。
肝主蔵血(肝は血海ともいう)と、生理と関わる衝脈(別名・血海)は深く関わるので、肝気鬱結は衝脈の気機阻滞を引きおこしやすく、生理不順が現れます。
この場合、月経周期は早まったり遅れたりと不規則です。
「気血同行」といって、気血は一緒になって身体を巡っています(気は血の帥・血は気の母)から、気機が阻滞すると血流も滞りやすくなり、緩慢な血流には瘀血が生じやすくなります。
経血に紫紺の塊、腹部に瘀血による刺痛固定痛、少腹部(肝の経絡が通る)の脹痛などが生じます。
脈濡渋 → 濡は精血不足や気血両虚にみられます。渋は血瘀や精血不足にみられます。
弁証・・・気滞血瘀証
立法・・・行気活血化瘀
方剤・・・血府逐瘀湯
血府逐瘀湯は、養血の代表的な方剤「四物湯」と調和肝脾剤の「四逆散」、活血化瘀の桃仁と紅花を組み合わせて加減された清時代の優れた方剤です。
多くの種類の血府逐瘀湯があり、たとえば生理痛が強い場合には少腹逐瘀湯などもおすすめできます。
気滞血瘀証は、気滞によって血流が悪くなり瘀血を生じるという順番で引きおこされやすい病証で、臨床でもよくみられます。
症状に「気滞証」に特徴的なものと、「血瘀証」に特徴的なものの両方が含まれているので最初は混乱するかもしれませんが、それぞれの主な症状をしっかり覚えてくださいネ!
また、肝の「疏泄を司る」働きにはさまざまな異なった働きが含まれていますので、それらもしっかりと覚えましょう。
次回も、Oさんの分析による弁証論治トレーニングです!
お付き合いいただきありがとうございました。
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