弁証論治トレーニング㉝生風と化風とは?


こんにちは!

今回は、初級クラスさんにとって、ちょっと難しく混乱しやすい生風と化風による病証についてです。

「風」「風邪」は薬膳学の最初の方で学び、五行学説や病因学説、臓象学説でもまず最初に出てきますね? けれども寒・暑・湿・燥・火のように、体感というか実感しにくく理解が難しいように感じます。

初級クラスさんは、これら病証の名前は覚えるだけでいいのですが、「風」の性質を思い出し、発症のプロセスを知ることは、「風」の理解に役立つと思いますョ!

cocoparisienne / Pixabay

肝風内動証(かんぷうないどうしょう)

肝風とは、疾病の発症進行の過程で現れる 動揺不安定・めまい・痙攣・震える・痺れる などの症状をいい、風邪の動を司る という特徴を具えています。

風によって物が揺れる、はためく、動くイメージと共通点がある症状ですね。

これらは外感の風邪によって引きおこされるのではなく、肝の機能失調によって身体の中に生じる「内風」によっておこるので肝風内動と呼ばれます。

肝風内動証には、①肝陽化風証 ②陰虚生風証 ③熱極生風証 ④血虚生風証 の4つがあり、臨床では脳梗塞や脳出血などにみられます。

主な症状

めまい、身体の震え、肢体の痺れ、四肢の痙攣、卒倒、意識不明、半身不随、脈弦など。

症状の分析

陽盛の体質による陰液の消耗、高熱により筋脈を灼傷し陰(津血精髄)が不足する、血虚により肝陰が滋養されないなどにより、肝陽が旺盛になりすぎて引きおこされます。

「肝は筋を司る」ので、肝の機能失調により筋脈を滋養できなくなると震えや痺れ、痙攣などがおこります。

風痰といって、内在する痰湿が風によって動かされ経絡を塞ぐと、卒倒や意識不明、半身不随などの重篤な症状を引きおこします。

①肝陽化風証(かんようかふうしょう)

主な症状

めまい、頭痛、頸部のこわばり、肢体の痺れ、身体の震え、言語障害、歩行困難、卒倒、意識障害、顔面神経麻痺、半身不随など。

症状の分析

肝腎の陰が極度に虚損し、陰が陽を制約できなくなると肝陽が亢進します。その状態が極まると風を生じることを表します。

肝腎同源といい、肝血と腎精(身体の重要な陰)の虚損がであり、制約されない陽の極度の亢進が生風を引きおこすというを示している虚実兼証です。

「肝は筋を司る」ので身体の動きに関する症状がでるほか、陽は上へと上がりやすい、風は常に動いている、風は高いところほど強く吹く…の特徴を表すように、身体の上半身や頭面部に症状が現れやすくなります。

肝陽化風証は、肝風内動証の基本の症状です。

立法・・・滋陰平肝熄風

方剤・・・大定風珠(だいていふうしゅ)など

 

②陰虚生風証(いんきょしょうふうしょう)

主な症状

筋肉がピクピク動く(蠕動)、痩せる、午後潮熱、五心煩熱、盗汗、のどの乾燥 舌紅少苔など。

症状の分析

陰虚により、津液が筋脈を滋養できなくなり引きおこされます。

立法・方剤は肝陽化風証に同じで、滋陰により肝陽を抑制して生風内動の症状を鎮めます。

 

③熱極生風証(ねつきょくしょうふうしょう)

主な症状

熱極まれば風を生ず…熱邪が旺盛になり、それが極まって内風を生じます。

高熱、口渇、歯をくいしばる(口噤)、意識不明、狂躁、心煩、頸部のこわばり、四肢痙攣、角弓反張(かくきゅうはんちょう)、両目上視、舌紅絳苔黄、脈弦数など。

症状の分析

多くは、熱邪が熾盛なため肝経が灼傷されて筋脈を滋養できなくなるのに加え、熱邪が心包を犯すことで引きおこされます。

角弓反張とは、頸部が固く硬直し、腰が弓なりに反った状態で硬直していることです。

両目上視は、白目を剥いたような状態で硬直した様子のことで「肝は目に開竅する」ことから、目に症状が現れるのがうなずけます。

skeeze / Pixabay

立法・・・清熱涼肝熄風

方剤・・・羚羊釣藤湯(れいようちょうとうとう)など

羚角鈎藤湯(れいかくこうとうとう)羚角釣藤湯(れいかくちょう とうとう)ともいいます。

 

 

④血虚生風証(けっきょしょうふうしょう)

主な症状

四肢の痺れ・知覚麻痺、筋肉の震え、関節不利、めまい、皮膚の搔痒感、舌質淡、脈弦細 など。

症状の分析

肝血の虚損により、筋脈が営養されず「肝は筋を司る」ことができなくなるために引きおこされます。

立法・・・養血熄風

方剤・・・阿膠鶏子黄湯(あきょうけいしおうとう)など


いかがでしたか? 生風や化風は「肝の蔵血を司る」働きや「筋を司る」働きの失調、陰陽バランス失調と関わること。現れる症状が「風」の特徴と同じであることがわかると思います。

「風」は、冷えている・熱を持っている・乾燥している・過剰に水分が溜っている…のように直接見て、触れて実感しにくい存在ですが、何かを動かしてはじめてそこにあるとわかります。

風邪は他の邪気と違って、風のように捉えどころがなく概念を理解しづらかったことを思い出します。

想像力を広げて風がもたらす事象をイメージし、風邪の特徴をよく覚えて分析にあたってくださいね!

 

 

この投稿へのコメント

  1. 裏内庭 said on 2018年1月14日 at 3:45 PM

    新米の鍼灸師です。
    ブログ、拝見させて頂きました。
    弁証論治を扱っているブログの中で、弁証に導くまでの的確なキーワードがしっかりと書かれているので、とても分かりやすかったです。

    他で読むと大事な要素が抜け落ちていたり、複数の証が立ってしまい絞り込めないようなものが多かったりするので、大変参考になりました。

    これからも期待してますので、よろしくお願いします!
    生意気に感じてしまったら申し訳ないです!

    • さいこ said on 2018年1月14日 at 8:30 PM

      裏内庭さま、はじめまして。
      コメントをくださり、ありがとうございます!
      弁証論治は自分が苦労して覚えた経験から、誰かのお役に立てるかも?と思い始めました。

      とりあえず初級の50ほどの証についてまとめようとしていますが、すぐにさぼってしまいます。
      コメントをいただけると、とても励みになりがんばれそうです!
      ぼつぼつと…な更新ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

      先般より、耳の調子が悪く鍼灸院に通い始めました。
      初めてなものでワクワク、ドキドキ…先生に「ゆっくり寝てなさい」と言われてしまいました。

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