弁証論治トレーニング㉚ 大腸実熱証
こんにちは。
前回に引き続き、Y先生に弁証論治をお願いしましたよ~!
とても詳しく分析してくださっていますから、ぜひお勉強に役立ててくださいネ!

大腸実熱証㉚
熱邪が旺盛になり、大腸の気機が阻滞されておこる腹痛・腹脹・便秘を中心とした症候群です。
主な症状
高熱、潮熱、発汗、のどの渇き、腹脹、腹痛で拒按、便秘またはときどき下痢、尿赤短、舌紅苔黄厚・乾燥、脈沈数有力。
ひどいと、排便ができない、譫語(うわごと)や狂乱状態、舌に焦黒や黒い芒刺がでることもある。
症状の分析
高熱、潮熱 → 内熱が旺盛か、強い熱邪により、実熱が結集した状態です。
この場合は腸内に熱がこもっています。
潮熱とは、あたかも潮の干満のように決まった時間に発熱するタイプの熱ですが、大腸は陽明の経絡に
属していて別名「日哺潮熱」(にっぽちょうねつ)や「陽明潮熱」とも呼ばれます。
日哺とは、陽明の経絡の気が盛んになる時間帯(午後3時~午後5時)を表す表現です。
発汗 → 内にある実熱が強く、津液が正常に分散されず外に押しやられて(外迫される)汗となって
出てしまいます。大汗のことが多いです。
のどの渇き、尿赤短 → 旺盛な内熱のため津液が外迫され、または消耗し引きおこされます。
腹痛、腹脹で拒按 → 実熱が大腸の気機を不通(不降や阻滞)にし、引きおこされます。
正常に伝導されず滞る便の水分が熱により奪われ、さらに津液を消耗した腸壁からの水分供給も受けられず、便はいっそう乾燥し固くなります。
こうなるとますます痛み、触れられるのを嫌がります。
ときどき下痢 → 大腸実熱証の下痢の特徴を「熱結傍流」(ねっけつぼうりゅう)といいます。
胃腸に実熱がこもり、乾結した便と下へと迫られる津液がうまく交じり合えず排泄されます。
黄色~青黒い、悪臭の強い水状の便と、固くなった便が分離した下痢となります。
舌紅苔黄厚・乾燥 → 内熱が強く、津液の消耗を表しています。
脈沈数有力 → 沈で有力とは、裏実証に多くみられます(沈無力は裏虚証ですね)。
有力脈とは寸関尺のいずれを軽中重の取り方でみても力強い脈拍を感じることで、それが数ですから
やはり裏の実熱を表しています。
ひどいと譫言、狂乱 → 強い熱邪と腑気不通により心神が乱され引きおこされます。
舌に焦黒や黒い芒刺 → 強い熱証で現れることがあります。
舌質は紅~絳紅(深紅色)~黒と、熱が強くなるにつれ変化してゆきます。
この場合、芒刺は舌の中央に現れることが多いです。(舌尖ならば心火、舌辺なら肝胆の火盛が疑われます)
弁証・・・大腸実熱証 または陽明腑実証、腸熱腑実証など。
立法・・・清熱通便 または 清熱通便潤腸など。
方剤・・・増液湯、大承気湯など。
このように強い腑実熱証には、苦寒泄熱通便の大黄と、鹹寒瀉熱通下の芒硝が主体の大承気湯を使うことが
多いです。

このような腸胃に熱結がある場合は、傷津も必ずあり攻補兼治(増液湯)するの
ですが、まずは腸内に燥結した便を排泄しなければ、何度も症状がぶり返すことになるからです。
「釜底抽薪」(ふていちゅうしん・釜の底から薪を引き抜く)という表現の
治療方法で、まずは排便をさせてから、消耗した津液や陰を補う…という考え方でいいでしょう。
さて、中級以上の方は六経弁証を学んでおられますね。
大腸実熱証は、陽明腑実証とほぼ同じです。
発熱するが悪寒はないという大熱・大渇・大汗と便秘、脈洪大が特徴で、陽明経は手陽明大腸経と足陽明胃経なので、手足の汗が多い…などの症状があります。
次回も大腸の病証を予定しています。
お付き合いいただきありがとうございました。
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