気滞とは?・弁証論治トレーニング㉕


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気虚証につづいて、今回は気滞証についてです。がんばりましょう!

気滞証とは…臓腑や経絡または局所的に気機が阻滞し、気の巡りが滞ることで引きおこされる臓腑や経絡の機能失調の証候のことです。


症例㉕

30才・女性、憂うつな気分が続き、ため息(太息)ばかりつく。

情緒が不安定で緊張しやすい。いつも同じ場所ではないが、脇のあたりが脹ったり、ガスが溜まりお腹が脹って痛んだり、少腹部が脹れる感じがある。

生理前に乳房が脹れて痛む感じがあり、腹痛や頭痛などいずれも脹るような痛みが強くなるが、生理が始まると治まる。

生理は、経血の量や周期が不安定である。

食欲不振、便秘がち、舌質淡苔白、脈玄。

 

症状の分析

憂鬱・ため息・情緒不安定・緊張しやすい→「肝の疏泄を司る」働きが失調し、情緒を調節する働きが不調になっていることが疑われます。

ため息は、気の鬱滞を解消しようとする無意識の行為です。

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脇・少腹部・乳房の脹痛→気機(気の昇降出入)が失調し滞ることで、遊走性(いつも同じ場所ではない)の脹痛が現れます。

脇、少腹部、乳房は肝の経絡が通ることから、肝気の鬱滞が疑われます。

頭痛にはいろいろなタイプがあり、ここでは述べられていませんが側頭部の脹れるような片頭痛は、肝気の鬱滞が関わることがあります。

「肝の疏泄を司る」働きは気機を通調させる働きを持つので、肝と気の巡行には深いかかわりがあるのです。

 

生理不順・生理前の乳房の脹痛、腹痛、頭痛などが生理が始まると収まる→肝主疏泄の働きは、生理と妊娠に関わる衝脈任脈を通調させて生殖機能を調節する働きがあります。

肝失疏泄では生理の正常を保てず不順となります(気の運動が変化に富んでいるように、早まったり遅れたりします)。

生理が始まると症状が治まるのは、出血に伴い気の鬱滞も動かされ緩和されるためです。

 

食欲不振→肝主疏泄は脾の消化吸収を促進する働きがあります。肝失疏泄により、中気(脾気の昇・胃気の降)も滞るため食欲不振や膨満感が現れやすくなります。

 

ガスが溜まり腹脹痛・便秘→上記のような脾胃の働きを促進…もですが、気機を通調させるということは、全身の気・血・臓腑の働きを正常に保つということです。肝失疏泄では脾胃だけでなく大腸の気も滞りますから、ガスが溜まりやすくなり、ふだん便秘気味の人は便秘がひどくなり、軟便気味の人は下痢をしやすくなります。

 

脈弦→弦脈とは脈の形態の1つで、琴の弦を押さえたような感じで、肝の病証(肝気の亢盛・肝乗など)によく現れます。

初級のみなさんでは、脈弦は肝の失調とわかるヒントになりますね。

ちなみに、肝は春に働きが盛んになりますから、健康な人にも春には、弦であっても柔和な脈象が現れることがあります。

これは正常な脈象ですよ。

 

舌質淡苔白→あまり強く病変を感じませんが、気機が鬱滞すると水液の代謝や血流も悪くなり、湿や瘀血が生じやすくなることも覚えておきましょう。

 

また、気の鬱滞が続くとだんだん熱化してきます。

すると例えばイライラと怒りっぽくなったり、舌質が紅くなってきたり、経血が濃く粘りを帯びたりもします。

 

立法

疏肝理気、疏肝解鬱など

方剤

四逆散など

気滞の病因病機は、内因で学んだようにストレスと関わることが多いのですが、他には飲食の不節制や六淫邪気の侵入、外傷、虫積などが原因となり、気機の阻滞や不通が引きおこされることで臓腑や経絡の機能が失調します。


気滞は、肝だけでなく胃・肺・大腸にも現れやすいです。個別に見てみましょう。

 

大腸の気滞証

気滞証の主な症状に加えて、腹部膨満感、腹痛、腹鳴、腹脹、便秘などが引きおこされます。

飲食不節や寒邪、大腸内の腫塊などが病因病機となり大腸の気機が阻滞されます。

また、肝気鬱滞が肝脾の調和を損ね、大腸の伝導を失調させることも原因となります。

立法・・・行気通脹、行気通便消脹など

方剤・・・六磨湯など

 

肺気上逆証

肺の気滞証です。外邪の侵入や痰湿の阻滞が、「肺の宣発と粛降を司る」働きを失調させることが病因病機となります(主に肺気の昇降が失調します)。

気滞証の主な症状に加えて、胸の痞えや胸痛、咳嗽、喘息、呼吸困難、痰などの症状が引きおこされます。

また、肝気の鬱滞が化熱し肺を傷めると(反克)、やはり肺気の上逆が引きおこされますが、その場合はもっと熱感を伴う症状が現れます。

立法・・・理気寛胸、降気平喘など

方剤・・・蘇子降気湯など

 

胃気上逆証

胃の気滞証です。

飲食不節や寒邪、痰飲、溢飲などにより、胃の腐熟や胃気の降濁の機能失調が病因病機となります(胃気は降が正常です)。

気滞証の主な症状に加えて、上腹部の膨満感、胸やけ、腹痛、食欲不振、しゃっくり(吃逆・呃逆)、げっぷ(噯逆・噯気)、吐き気(悪心)、嘔吐などの症状が引きおこされます。

また、肝気の鬱滞が脾胃の気機の昇降を失調させることも病因病機となります。

この場合は肝胃不和証や肝気犯胃証などといいます。

立法・・・理気和胃 + 消脹、降逆止嘔など

方剤・・・旋覆代赭湯など

 

肝気上逆証

肝の気滞証ですが、気鬱が化火したり、激怒で肝気が昇発しすぎて気火上炎することが病因病機となります。

気滞証の主な症状に加えて、頭痛やめまい、昏厥(突然倒れて手足が冷たく、人事不省となる)、吐血などの症状が引きおこされます。

肝気は昇・発散が正常ですが、過激な昇発はよくないのですね。

立法・・・降気鎮逆

方剤・・・六磨飲子など


今回は気滞証に付いて学びましたがいかがでしたか?

「気」は目には見えませんが、私たちの身体にとって非常に重要な役割を担っています。気機は決して滞ることなく、向かうべき方向にスムーズに巡っていくことが大切です。

気機は水液代謝や血液循環にも深く関わるので、気滞になると水湿や瘀血が生じやすくなります。症状をよく分析して、必要があれば立法に入れましょう。

 

 

 

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