気虚とは?・弁証論治トレーニング㉔


お久しぶりでーす! 弁トレを再開します。

これからはせめて週1をノルマに進めていきたいと思っています(今のところ)…ということで、弁トレの基本のような「気虚」からスタートです。

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中医学を学ぶと「気」という言葉がいたるところに繰り返し出てきますから、少しだけおさらいをしましょう。

「気」は大昔の人々の概念として、目には見えないけれど自然界を構成する最も原始的な物質で、「気」の運動変化が自然界のすべてのものを生み出し循環させると考えました…つまりエネルギー物質のようなものといえるでしょうか。

人間も自然界の一部であり、その生命活動も「気」の働きにより維持されていると考えます。

 

「気」の文字は、重要な要素となる言葉の多くに使われています。

例えば…食べ物を穀気、営養を水穀精気、精微物質を精気、致病素因を邪気、食薬の寒涼温熱の性質を四気というなどです。

 

基本の「気」は違った特徴を持つ4つの「気」に分けられています。

①生命の源となり、生まれつきの腎精(腎の精気)から生成される元気…生まれてから後は、脾胃で生成される水穀精微から作られ補充さ れます…別名は原気、真気。

②脾気が水穀精微を肺に運び、肺が呼吸で得た新鮮な空気と合わさって生成される宗気…別名は大気。

③水穀精微から生成され、(イメージとしては重く濃い部分が)血液の一部となって血流とともに全身をめぐり、五臓六腑を営養し調和する営気…別名は営血、営陰、栄気。ちなみに、中医学では栄養ではなく営養と書きますョ!

④水穀精微から生成される、(イメージとしては軽く活動的な部分)活力旺盛な部分は腎気の気化作用で変化し、体表・臓腑・全身をめぐる衛気…別名は衛陽。

 

臓腑の気は、肝気・心気・脾気・肺気・腎気・胃気・大腸の気など五臓六腑の気で、臓腑の機能のことをいいます。

このほか、経絡をめぐる経絡の気もあります。


気虚証とは、気が不足して臓腑・組織を温養不足となり、機能が低下して現れる症候群です。

症例㉔気虚証

45才 主婦、ここ数年疲れやすくなったと感じる。

倦怠感やめまい、息切れを感じ、家事で動き回ると症状がひどくなる。

話すのが億劫に感じる、動いていなくても汗をかくことが多い。

舌質淡苔白、脈虚。

症状の分析

45才→中年期で、若い時に比べると臓腑機能が全体的に衰えてきていると思われます。

めまい、息切れ→気が不足していることが疑われます。

この症状だけではなぜ不足しているのか…気を消耗しているせいなのか?気の生成不足によるものか?はまだわかりません。

 

話すのが億劫に感じる→気の不足が疑われます。

発声には気が深く関わりますが、話したくないという症状は精神的な原因によることもあります。

ですが、この症例には精神的なことは書かれていませんので、思い込みで診断しないようにしましょう。

 

動くと症状がひどくなる→動くということは気の推動作用によるものですから、気が不足している場合はいっそう消耗してしまいます。

 

疲れやすい、倦怠感→活動できるのは、気の推動作用によります。

(カルテには脾の症状は書かれておらず、脾気不足と断定できませんが、脾は気血化生の源です。また脾は四肢と筋肉を司るので、やはり体が疲れやすい…ということがおこります)。

 

動かなくても汗が出る→自汗といい、気虚の特徴的な汗です。

気の固摂作用が弱まると、毛穴や汗腺の開閉をコントロールする力が弱まり、むやみと汗が流れ出てしまいます。

 

舌質淡・苔白→健康な舌質は体格に合った程よい大きさと厚さで、潤いのある淡紅色です。

舌苔は、うっすらと苔がある薄白がよい状態です。

淡…は淡白で少し色が薄く、健康的な赤みが少し不足して見える感じです。

舌苔白…は少し苔が厚みを持ち白く見えています。

気虚、中でも脾気虚では運化を司る機能が失調し、水湿が停滞しやすくなります。

苔白は少し湿が溜っている感じです。

 

脈虚→正気の不足を表します。

 

弁証・・・気虚証

立法・・・補気(主に脾気、肺気を補益します…脾は気血化生の源、肺は一身の気を司る)

方剤・・・四君子湯など

 

今回の症例では気虚証と弁証しました。

でもどの臓腑の気虚なのでしょうか?それは、それぞれの臓腑の特徴的な症状が書かれていなければわかりません。

よく気虚証が現れる臓腑ごとに症状をまとめてみましたので、あわせて覚えてくださいね!

 

心気虚証

前述の気虚の症状に加えて、心の症状が現れます。

心悸・胸悶→「心は血脈を司る」働きが低下すると、血液循環も低下するので酸素の供給が不足し、引きおこされます。

 

Peter-Lomas / Pixabay

顔蒼白→「心の華は顔に現れる」とは、心の健康状態が顔の色つやからうかがえるということです。

心の血脈を司る働きが低下し、顔も営養されないためです。

 

不眠→「心は神志を司る」働きは、生命反応や精神活動をコントロールする働きです。

心の血脈を司る働きが低下すると、心は養われなくなるため、神志を安定させることができず、不眠や不安などを引きおこします。

 

自汗→気虚の基本的な症状ですが、五臓と五液(涙・汗・涎・涕・唾)の関係を見ると、心の液は汗です。

心気虚の場合、自汗は他の臓腑の気虚に比べていっそうひどくなります。

 

立法・・・補益心気

どの臓腑の何を補うのか?今回は心の気を補う…ですね。

立法にはそこがはっきりとわかるように書くのがポイントです。

 

方剤・・・生脈散など

 

肺気虚証

気虚の症状に加えて、肺の症状が現れます。

慢性の咳嗽→コンコンとよく出る咳です。

「肺は全身の気と呼吸を司る」働きが低下すると引きおこされます。

 

喘息・息切れ・声に力がない→同上

 

痰が多くて薄い→「肺は宣発と粛降を司る」働きは、津液・水の運行、分散により臓腑を潤し営養し、水を腎・膀胱に送って気化作用で尿を作り排泄します。

この働きを肺の通条水道といいます。

肺の宣発と粛降を司る働きが低下すると、この通条水道の働きも低下し水の代謝がうまくいかなくなり、痰が生じやすくなります。

この場合、痰は水っぽく(あるいは白っぽく)薄く量が多くなります。

 

顔淡白または蒼白→肺は「百脈が集合するところ」(肺朝百脈)といって、「肺の気と呼吸を司る」働きにより気機と血流を調節していることからそのように表現されます。

肺の気と呼吸を司る働きが低下すると、血流は緩慢になり顔が滋養されなくなるため引きおこされます。

 

カゼをひきやすい→「肺は宣発と粛降を司る」働きは衛気を体表に送り、身体を守ります。

衛気が不足すると、腠理(毛穴や汗腺)の開閉をコントロールする力が弱まり、邪気の侵入を容易にしてしまいます。

汗腺の開閉に関わりますから、発汗(自汗)もしやすくなります。

「肺の華は皮毛に現れる」といい、肺の健康状態は毛穴や汗腺から知ることもできるのです。

中医学では、「カゼをひきやすい…は肺から治す」といいますネ。

 

立法・・・補肺益気

方剤・・・人参蛤蚧散 

蛤蚧とは、オオヤモリ(トッケイ)のことです。

内臓や鱗を取り除いて干したもので、尾の部分が効能が強いといわれます。

Josch13 / Pixabay

伝統的に雌雄ペアで用いるんだそうですョ!

 

 

 

 

 

脾気虚証

気虚の症状に加えて、脾の症状が出ます。

食欲がない→「脾は運化を司る」働きが低下すると、消化機能が低下し引きおこされます。

 

膨満感があり、食後にひどくなる→同上。

食べるといっそう脾気を消耗するので、痞えてきます。

 

食後に痰が多い→脾主運化の失調は痰湿の停滞を招きます(脾主運化とは、脾は運化を司る…のことです)。

食事をして脾気が動くと溜っている痰も動かされます。

痰は薄くて(白っぽくて)多く、吐き出しやすいです。

 

むくみ・下痢→脾の運化が失調すると、昇清作用が低下し水穀精微が下の方に降りてしまい下痢になります。

皮膚に溢れ出てしまうとむくみになります。

昇清作用とは、水穀精微を心肺に送り宗気を生成したり、血を生成したり、脳を営養することですね。

 

消瘦または肥満→脾の運化が失調すると、気血津精が十分に生成されないため営養不足となり痩せてきます。

あるいは水湿が停滞すると、ぽっちゃりとしたむくんだような肥満になります。

 

四肢の無力感・疲れ→脾の運化が失調すると、気血津精が生成不足となり営養されません。

「脾は四肢と筋肉を司る」のです。

 

顔色が萎黄または淡黄→脾の昇清作用の低下や気血化生の不足で、頭面部が営養されません。

五臓と五色(青・赤・黄・白・黒)の関係では、黄は脾の色です。

脾の病症では、黄色っぽくくすんだ色が現れることがあります。

 

舌に歯痕→脾失健運で、水液代謝の機能が低下し湿が停滞しやすくなります。

舌もゆるんでむくんだような感じで、歯列に押しつけられるため舌辺に歯型がつきます。

脾失健運とは、脾の運化を司る働きが失調する…のことです。

 

立法・・・補脾益気

方剤・・・四君子湯

 

なお、脾気虚は「脾気下陥証」と「脾不統血証」に、さらに弁証されます。

 

「脾気下陥証」

脾気が弱まると清陽を登らせることができず、内臓下垂(胃下垂、子宮下垂、脱肛など)、脇や少腹部が重い、めまいがよくおきる、下痢などの症状が特徴です。

これは、気の固摂作用で内臓の位置を保つ力が弱まることも関係します。

脾気は昇(上る)が正常な方向ですよ。

 

立法・・・益気昇陽

方剤・・・補中益気湯など

 

「脾不統血証」

気の固摂作用とは、大切なものがむやみと漏れ出てしまわないようにコントロールする作用ですが、なかでも「脾は統血を司る」といって、脾気は血液が血管から漏れ出ないようにしています。

この作用が弱まると出血症状(血便、血尿、皮下出血、咳血、鼻血、吐血、不正出血など)が現れます。

不正出血とは、月経でもないのに性器から一時的にあるいは継続的に出血があることです。

 

立法・・・補気止血

方剤・・・帰脾湯など

 

 

腎気虚証

虚証の症状に加えて、腎の症状が現れます。

足腰がだるい→「腰は腎の府」(腎の家という意味)といい、腎機能が失調すると足腰がだるい、重い、痛い…などの症状が現れます。

腰膝俊難、腰膝酸難などとも表現されます。

 

耳鳴り→「腎は蔵精を司る」とは、先天の精を貯蔵し後天の精を補充することで精気を充実させることです

「腎は耳に開竅する」ので、腎精が不足し耳が養われないと耳鳴りや難聴が引きおこされます。

 

白髪→「腎の華は髪に現れる」ので、腎精が不足すると精血により髪が営養されなくなります。

 

頻尿・尿漏れ・夜尿→「腎は二便を司る」ので、腎気が虚すと経絡で深く関わる膀胱の開閉も弱まります。

 

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脈沈→身体の深いところの臓腑が虚している脈象です。

 

立法・・・補益腎気

方剤・・・腎気丸など

 

腎気虚証は「腎気不固証」と「腎不納気証」にさらに弁証されます。

「腎気不固証」

腎気の固摂作用低下し、頻尿、尿漏れ、慢性下痢、帯下(おりもの)、流産しやすい…などの症状が目立ちます。

「腎は陰部に通じる」といい、生殖や性機能にも深く関わります。

 

立法・・・補腎固気

方剤・・・牛車腎気丸など

「腎不納気証」

腎は肺と協力して呼吸に深く関わります

「納気を司る」といい、主に吸気を身体の深部まで引き込み収める役割を担っているのです。

腎気が虚すと納気を納められないため、息切れや慢性の咳、呼多吸少といって吐く息ばかりで、息が吸えないような喘息が引きおこされます。

立法・・・補腎納気

方剤・・・都気丸など

 

 

 

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