夏に多い急な胃腸障害・弁証論治トレーニング㉑


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こんにちは! 久しぶりの弁証論治トレーニングは、脾の病証からです。

それではさっそくやってみましょう~。

症例㉑

診察日6月30日、21歳男性。

仲間4人と一緒に10日間ほどキャンプをして楽しく過ごしたが、終わり頃から体調不良となる。帰宅後、黄疸を発症し受診した。

皮膚や白目の部分が鮮やかな黄色になっている。キャンプの終わる頃から体が重く食欲がない。口が苦く感じる。お腹が痞えて膨満感があり、胸やけや吐き気もあり、現在も続いている。

痛みはあまりないが下痢をしている。尿が濃い。午後になると熱が出るが、汗をかいても解熱しない。

舌質紅黄膩、脈濡数。

キャンプ中は、連日蒸し暑かった。毎晩仲間とバーベキューをしてよく食べ、お酒もたくさん飲んでいた。ほかのメンバーに体調不良を訴える者はいない。


症状の分析

急性の黄疸 → 黄疸はいくつかのタイプがありますが、多くの場合、肝胆の病症や脾胃の病症、湿熱がかかわります。慢性の黄疸ではなく、急性で鮮明な黄色であることから、陽黄(ようおう)というタイプであると思われます。

6月末の蒸し暑さ、連日の飲酒、肉などを強く炙り焼く食事などで、脾胃に湿熱がたまり肝胆におよび、肝胆の疏泄を失調させたために、胆汁が本来の経路をはずれて皮膚にまで溢れ出て黄疸をひきおこしていると思われます。

 

口が苦い → 胆汁が上溢してきて口にあふれているようです。肝胆の疏泄が失調していることが考えられ、これも脾胃の湿熱が肝胆に及んでいることが影響していると思われます。脾胃湿熱だけでは、口が甘くネバネバした感じになります。

 

身体が重い → 湿が経絡を阻滞していると思われます。また湿により脾が傷むと「脾は肌肉を司る」ことができず、身体や四肢が重いだるい症状がひきおこされます。

湿は粘滞性があり気血の流れを阻滞しやすい特徴があり、例えば上焦に滞り気機を阻滞すると営養物質も上昇できません。すると頭が重い、あるいは重痛といった症状が現れます。

 

腹部膨満感・痞え・食欲がない・胸やけ・吐き気 → 脾胃に湿が停滞し、脾胃の運化と受納の機能が失調すると気機の昇降が障害されます。

 

下痢・尿が濃い → 脾の運化が失調し湿が停滞→水液代謝の低下をひきおこします。

下痢は泥状便で臭いが強いことが多いです。湿熱が盛んだと、大腸・小腸の伝化も失調し腹痛や便意の急迫、排便後の不爽感、肛門の灼熱感も強まります。

尿が濃いのは熱の存在が考えられ(湿熱)、排尿困難な場合もあります。女性の場合は帯下が増え、熱が強ければ臭いや色(黄色っぽい)も強くなります。運化の失調により下半身などにむくみが生じることもあります。

 

午後潮熱・発汗しても解熱しない → 潮熱にはおもに3種類(陽明・湿熱・陰虚)あり、この場合は湿熱と思われ、午後~夜に発熱します。

湿熱による発熱は、身熱不揚(しんねつふよう)といって、触れても最初あまり熱が感じられないが、しばらく肌に触れていると熱が強く伝わってきます。これは湿邪が熱邪を抑え込むため、熱の浸透が妨げられることによるものです。湿邪の粘滞性により湿熱はこもりやすく、発汗しても解熱できないことがあるのです。

 

舌紅黄膩・脈濡数 → 舌が紅く舌苔が黄色なことは熱証を、(じ・ねばねばしている)は湿の停滞を示しています。脈象も湿と熱の存在を示しています。

 

他のメンバーに症状はない → 感染症や食中毒、伝染病の可能性は低いと考えられます。

 

弁証

湿熱蘊脾証(しつねつうんぴしょう)、脾胃湿熱証など。

 

立法

清熱化湿健脾など。

 

方剤

葛根芩連湯(かっこんごんれんとう)など。

方意は、陽明経に入経する葛根と抗生剤である黄芩と黄連による組成です。これは漢の時代に張仲景さんが「傷寒雑病論」で著した方剤です。

陽明経とは、手陽明大腸経足陽明胃経のことです。

黄芩は肺経に入りますので、肺と表裏の関係にある大腸にも作用し、黄連は心経に入るので、心と表裏の関係にある小腸に働きかけることができるのです。苦寒の黄芩と黄連は胃腸の熱邪を清熱して止痢に働きます。ちなみに炙甘草は甘緩和中と薬材の調和に働きますョ。

 

よく使う食薬

清熱類:粟、白菜、水菜、きゅうり、苦瓜、スイカ、バナナ、豆腐、湯葉、茶、芦根、荷葉、竹葉、山梔子、金銀花、黄連、黄柏など。

祛湿類:冬瓜、トウモロコシ、大豆、小豆、しじみ、金針菜、茯苓、車前子、薏苡仁、白茅根など。

 

弁証施膳の例

しじみと蒓菜(じゅんさい)の豆乳味噌スープ

 

材料(2~3食分)

シジミ300g、蒓菜1パック、豆乳200ml、味噌適量

 

作り方

①しじみは砂抜きをしてよく洗う。蒓菜も軽く水を通して洗う。

②しじみと水を鍋に入れてゆっくり過熱し、貝が開いたらアクを取る。

③火を止めて、味噌と豆乳を加えて味を調える。

④蒓菜を最後に入れて、軽く温める。

★しじみと蒓菜は、どちらも清熱類で退黄の作用を持ちます。


ポイント

湿熱の邪気に対する立法・立膳を考えるときには、湿と熱のどちらが強く症状に現れているか?黄疸・下痢・便秘・排尿困難・むくみなど、特に強く訴える症状はどれか?をよく見てそれに合った食薬を選びます。

今回は黄疸の説明を兼ねての弁証論治トレーニングです。清熱祛湿退黄を考えてみました。中級以上の方は、経絡弁証・温病弁証も併せて見てくださいね。


黄疸あれこれ…

黄疸とは、外因・内因のどちらかが関係する場合、両方が複雑に関係する場合、湿熱が鬱滞した軽いものから胆汁が外溢してしまうもの、命に係わる重症のものまでいろいろありますが、多くの場合は湿と熱の邪気が鬱滞してひきおこされることが多いです。

脾の運化の失調と湿、脾病の症状に現れる黄色はよく著されている関係だと、皆さまはよくご存じですね?

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症例㉑では、湿熱の鬱滞で胆汁が外溢してしまった「陽黄」としましたが、この黄疸は例えるとミカンの皮のような黄色といわれます。

湿熱に、伝染性があるような強い熱毒の邪気が加わると、発病は急激でたちまち黄金色に染まるような重篤な黄疸となり、これを「急黄」といいます。

身近にある黄疸のケースでは「陽黄」に対し「陰黄」(いんおう)があります。これは湿熱ではなく寒湿の邪気が脾の運化を失調させ、陽気不宣となるため胆汁が外溢しておこります。寒湿困脾証(かんしつこんぴしょう)の症状として学んだことがありますね?

陰黄では、目や身体が晦黄(かいおう)つまりくすんだ、燻したような暗い黄色になります。傷んだり腐ったりしたミカンの皮のような…といわれることもあります。


以前に寒湿困脾証は弁トレでやりましたね。夏に多い生冷食の過食や、夏の胃腸系のカゼなどが原因となる…と学びました。

今回の湿熱蘊脾証も夏に多く、食中毒や急性の大腸炎、赤痢なども同類の症例となります。

次回も弁証論治トレーニングです。また脾胃に停滞する湿に対する薬膳レシピも投稿する予定です。

お付き合いいただきありがとうございました。

 

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