「春は肝」やさしく解説・中医学から見た五臓の働き


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2月4日は「立春」ですね。まだまだ寒いですが、低い気温のピークを過ぎて自然界は「陰」から「陽」へと転じ、少しづつ春の気配を感じられるようになってきます。

中医学では、人間は自然界の中で生かされていて、自然と密接な関係にあると考えています。季節変化に伴って体も変化し、季節によって働きが盛んになる臓が違い、それぞれの季節に特有の邪気に侵されやすく、そのための養生が大切だと説いています。

「春は肝の働きが盛んになる」といいます。

中医学から見た「肝」の特徴や働きについて、また春に気をつけたい「肝」の養生について、わかりやすくまとめてみました。


中医学から見た肝とは

まずはじめに、内臓のことをよく「五臓六腑」(ごぞうろっぷ)といいますが、中医学では五臓六腑について述べるとき、西洋医学からみた臓器の機能だけではなく、中国の古代哲学や自然科学も含めた視点から説明をします。

たとえば肝は情緒の安定と深く関わりますが、西洋医学ではそのような考え方はありません。ですが、自律神経の失調などにより情緒が不安定なとき、中医学の診断によって「肝」の働きを調えるように治療をすると改善する…こんなケースはよく見られます。

西洋医学は、解剖学や病原菌についての研究にきわめて優れた、ミクロ的な視点を持つ医学といえますが、中医学は体に現れてくる有形無形の症状や変化を観察し、病気の本質や原因、体質や環境などとの関係性を深く掘り下げたマクロ的な医学といえるでしょう。

 

肝の働き

肝は、五行学説では「木」に属しています。

五行学説は、古代社会でなくてはならない自然界の5つの重要なもの、木・火・土・金・水 の特徴と自然界での循環に当てはめて、五臓の性質や働き、互いの関係性を研究した学説です。

自然界では春になると暖かい東風(春一番)が吹き、草木は芽吹きのびのびと成長を始めます。この春の陽気を感じて肝の働きが盛んになり、肝気(肝の気・肝の働きを推進する、興奮させる、温めるなどの作用を持つ)が伸びやかに全身を巡り始めます。

人間は冬眠こそしませんが、冬の間は消耗を避け代謝を落としています。冬の間、寒さに耐えて固くなっていた体は、肝気が巡り始めることで温まり、若木のように柔らかく伸びやかになっていきます。

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このような共通点を見出した古代の人々は、

春は肝の働きが盛んになる・春は肝の養生を大切にする
肝は木に属する・風は肝に通じる

という考えを持つようになりました。

 

肝の生理機能

1.肝は疏泄を司る(かんは、そせつをつかさどる)

疏泄とは、開通することと外に出していくことです。肝気の重要な働きの1つで、気をスムーズに巡らせる役割を、五臓の中では主に肝が担っているということです。したがって肝気は溜まり滞ることが最も嫌いです。

肝の疏泄を司る働きにはいくつかの役割があるので、以下にまとめました。

 

①精神・情緒の安定と維持

情緒に関わる言葉にはよく「気」が使われていますね?元気がある、嫌気がさす、気落ちする、気持ちいい…など。気の巡りがスムーズだと精神は安定し、性格は明るく保たれ、リラックスし、安眠できるということです。また、負の感情が関わるものを調節するのは肝だけだともいいます。

 

②気機を通調する(ききを、つうちょうする)

気機とは、昇降出入という気の運動方向です。つまり気の巡りをスムーズにする(通調する)という意味です。気の巡りがいいと血流もよくなり、気血が全身に行き渡りやすく営養がしっかり送り届けられるので、臓腑や組織が健康です。気血の通り道である経絡の通りもよくなるので、それによってつながる臓腑間の連携もうまくいきます。血流が正常であることは、生理の順調や安眠にも関わります。

水液の代謝を順調に保つ役割もあります。むくみや痰がないこと、めまいがないこと、大便が順調なのは気機の通調によるところが大きいのです。

 

③消化吸収を促進する

消化吸収は、という臓とという腑が中心的な役割を担っています。胃は食べた飲食物の初期消化をして、胃気によって下に降ろしていきます。反対に脾は、消化吸収したものから水穀精微(すいこくせいび)という営養物質を作り出し、気・血・津液・精に変化させて、脾気によって肺や心などの上の方に送っていきます。このように胃気の降↓と脾気の昇↑は、肝の気機を通調する働きの助けがあって順調にいき、消化吸収を促進することができます。

また、肝と経絡を通じて表裏の関係にある腑の「胆」は、消化吸収に必要な胆汁を分泌して、肝の働きを補佐しています。

 

④性機能を正常に保つ

性機能の成熟には「肝の疏泄を司る」働きと、「腎の蔵精を司る」(じんの、ぞうせいをつかさどる)働きのバランスが大切です。腎精は卵子や精子の生成に不可欠な物質です。

肝の疏泄機能が正常であれば、生理や排卵、射精は順調です。特に生理との関わりが深いため、女子は肝を先天の本とする(重要とする)、男子は腎を先天の本とする…といいます。


肝は、よく沈黙の臓器といわれ不調があってもよく耐えて、なかなか症状を現さないという特徴があるということを聞いたことがありますか?

中医学でも似たような認識を持っていますが、全く違う点は臓腑にも「陰陽」2つの働きが備わっていると考えることでしょうか。肝は陰陽のうち陽が強くなりやすい臓だといわれています。

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このことから肝は、辛抱強く逞しいけど興奮しやすく怒りっぽい「将軍の官」とも呼ばれます。肝の裏側に寄り添うようにある胆は、冷静で肝の性格を中和するという役回りであることから「中正の官」と呼ばれます。 (※中正・・・偏らず正しいという意味)

中医学の勉強には、ときどきこのような歴史や文学で習うようなことが出てきておもしろいと感じます。次回は、肝の生理機能のつづき「蔵血を司る」からです。

お付き合いいただきありがとうございました。

 

 

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