必勝合格!弁証論治のまとめ方(前編)

ここまで20回にわたり、弁証論治トレーニングをしてきましたが、症状を分析して「証」にまとめる手順に少しは慣れててもらえたでしょうか?
薬膳師の資格試験では限られた時間の中で、カルテを見て症状を分析し、病証名を決め、治療法を考え、適した薬膳のレシピをまとめる…を何問かこなさなければいけません。
よく「症状の分析って、あんなに細かく書かないとダメなんですか?」と質問を受けるので、今回は試験対策として弁証論治・弁証施膳まとめ方について書きたいと思います。
まずは弁証論治の手順から確認を。 弁証施膳は、弁証論治に薬膳レシピを加えたものですよ。
①カルテを見て最初に探すものは?
1.臓腑の名前があるか?
たとえば、心臓まわりが痛む、心前区に刺痛、肝区に脹れ、胃脘部の痞え、レントゲンで肺に影がある、人工透析を受けている(腎機能)など。はっきりと臓腑の名前が書かれているときは、その臓腑に関わる病証だと考えられます。
2.臓腑の名前がなければ、臓腑と経絡でつながる(開竅する)器官に特別な症状があるか?
五臓はそれぞれ、経絡でつながる(開竅する)器官が決まっています。肝→目、心→舌、脾→口、肺→鼻、腎→耳のようにです。
目が赤い、視力が落ちた、夜に目が見えにくい、舌に口内炎ができる、口が甘い、口の中が粘る、味がしない、鼻が乾燥する、水っぽい鼻水が出る、聴力が落ちた、耳鳴りがする…など、特定の器官に現れた症状が書かれていれば、そこに対応する臓に病症があると考えられます。
3.臓腑と関わる経絡が通っている場所に症状があるか?
経絡とは、臓腑と体の組織・器官を結ぶ気血の通り道です。経絡の上には経穴(ツボ)が並んでいて、針灸の治療には欠かせない知識です。大変難しいので、薬膳師のテキストでは経絡上に現れるごく一部の症状が紹介されています。
たとえば、脇肋部に脹れや痛み→肝の経絡が通る部分→肝の病症の疑い。歯が痛む→胃の経絡が通る部分→胃の病症の疑い。などがあり、関わる臓を知るヒントになります。(中医師の試験を受ける人は、経絡弁証を学ぶので、もっとくわしく症状を覚えることになります)
4.症状に傾向はあるか?
1~3のように臓腑や、開竅する器官がはっきりとはわからないときには、症状の傾向を見ます。
たとえば、食欲不振、食べてもすぐに空腹感がおきる、腹が脹る、痞える、悪心嘔吐、げっぷ、下痢などの消化器系の症状が多ければ、脾胃に関わる病証であることが多いです。
咳・喘息、息切れ、痰が絡む、痰が多いなど呼吸器系の症状が多ければ、肺の病症が疑われます。
動悸、胸悶、不整脈、高血圧など血流に関わる症状は心の病症が疑われます。
気分の抑うつ感、怒りっぽい、ため息など情緒的な症状は、肝の病症によく現れます。
頻尿や尿漏れ、便の漏れ、性機能の減退、足腰のだるさや痛みは腎の病症が疑われます。
1~4のように、まずどの臓腑に問題があるか?の見当をつけてから、次にどのような性質の病症か?をほかの症状から分析するようにします。このように臓腑という観点から弁証論治することを臓腑弁証といいます。
病症は1つの臓にだけ現れるとは限りません。複数の臓腑が関わっていることが実際には多いものです。
1つの症状について、考えられる原因を全部書き出してみるトレーニングを積むと、一番矛盾がない臓と臓の組み合わせや原因を説明できるようになりますから、是非がんばってくださいね。
これから試験を受ける人は、勉強した病証の1つ1つをバラバラに覚えようとしがちです。1つの病証について名前(弁証)を覚え、症状を覚え、原因を覚え、治療法を覚え、方剤を覚える…。たくさんある病証についてすべて覚えるのって大変!ですよね。
授業やテキストで学ぶ手順がそのようになっているので、その順番で覚えようとしますが、弁証論治の試験では、手順が逆になるので戸惑ってしまうのです。
まず大切なのは、「覚えること」と「考えること」を分けることです。
症状の特徴や方剤は、覚えないと考えても出てくるものではありません。でも、弁証(病証の名前)や治療法は意味が合っていれば、多少の表現の違いはあってもいいのです。
弁証論治トレーニングでも、複数の弁証や治療法を書いていますが、パターンはいつも決まっていて、どの臓の何を(気血津液精や邪気)、どうしたいのか(取り除く・補う・通す・調和させるなど)を4~6文字の漢字で表現しています。(臓がなくて、何をどうしたいかだけの場合もあります)
では次に、違う視点からカルテを見てみましょう。
②カルテを見て次に探すものは?
1.気血津液精神に問題はないか?
気・血・津液・精・神は体の重要な構成要素です。問題があるということは、不足する(営養されない)ことか、運行が停滞する・逆行することのどちらかといえます。これらが多すぎて健康問題になることはありません。
つまり気・血・津液・精・神のそれぞれについて、不足した場合、停滞した場合にどんな特徴的な症状が現れるのか?現れやすい臓はどれで、複数ある場合はどこで見分けるのか?を覚えます。
たとえば「気」について。
気虚証になると・・・主な症状は疲れやすい、息切れ、めまい、無気力、自汗、活動すると諸症状が悪化する、舌淡、脈虚など。気虚の一種には気陥証もあります。各臓腑の気虚証は、主な症状に加えて以下のような症状が現れます。
脾気虚証→食欲減退、食後膨満感、下痢、体が痩せる、顔色萎黄など。脾気下陥では内臓下垂、子宮下垂、脱肛など。
肺気虚証→咳、喘息、息切れ、活動時に悪化する、喀痰、声が低微など。
心気虚証→心悸、息切れ、活動時に悪化、不整脈、自汗がひどいなど。
腎気虚証→足腰だるい、精神疲労。腎気不固では頻尿、遺尿、滑精、帯下、胎動不安など。腎不納気では喘息など。
気滞証になると・・・主な症状は固定していない脹痛、うつ状態、脇肋脹痛、腹部の脹痛、舌淡苔白、脈弦など。各臓腑の気滞証には以下のような症状が加わります。
肝の気滞→イライラ、怒りっぽい、情緒不安定、食欲不振など。
肺の気滞→胸悶、胸痛、咳、喘息、痰、呼吸困難など。
胃の気体→げっぷ、嘔吐、吐き気、胸やけ、腹痛、胃脘部膨満感、食欲不振など。
大腸の気滞→腹鳴、腹脹、便秘、腹痛、腹部膨満感など。
同様に「気逆証」について主な症状を覚え、肺・胃・肝に現れた場合の特徴もまとめてみましょう。
血・津液・精・神についても同じようにまとめて、症状の特徴を覚えるようにしましょう。
弁証論治の設問の多くは、臓腑や気血津液精(神)についてです。次に邪気の性質を弁証するものもあります。
たとえば、一般的なカゼひきの弁証論治で、風寒表証(冬のカゼ)や風熱表証(夏のカゼ)といったもののほか、寒湿証や湿熱証などという弁証論治もあります。
まず重要なことは、どこに何がおきているかを見極めることです。カルテをよく読んで、書かれている症状だけを分析します。思い込みでそこにない症状を勝手に付け加えて弁証してはダメですョ。
次回は、症状を分析して分量が多くなった文章をまとめる方法についてです。
お付き合いいただきありがとうございました。
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