咳・喘息に7つのタイプ?原因と薬膳処方その5・弁証論治トレーニング⑱

今回は、肝が関わる咳・喘息についてです。
肝臓と呼吸器系の症状って、あまり関係なさそうですね?でも肝には「疏泄を司る」働きがあり、そこには「気」の巡りを調節するという役割が含まれています。
気の巡りは私たちの情緒と深い関係があり、ストレスや緊張、怒りの感情は特に肝の気(肝気)を鬱屈させて、滞らせやすいといわれています。では症例を通して見てみましょう。
症例⑱・・・肝火犯肺証
突然に咳き込む、顔を真っ赤にして激しく咳き込みのどは乾燥する、いつも痰が絡んだ感じがあり吐き出しにくい、痰は少なく粘稠、血痰、口が渇き苦い、胸脇が脹痛、これらの症状は情緒刺激により悪化する、体が熱っぽい、舌紅苔黄、脈弦数など
症状の分析
突然の激しい咳発作→肝気がスムーズに流れず鬱結すると、だんだんと熱化して肝火になります。鬱結した気火が逆上すると、肺に熱が移り肺の「宣発粛降を司る」働きを犯し咳がおこります。
のどと口の乾燥、口苦い→肝火が強く上炎(上に向かって伝わる)すると、乾燥症状が口のどに現れます。肝と表裏の関係にある、胆の胆汁も本来の流れる経路から溢れ、肝の火熱とともに口へと上がっていくため口が苦くなります。
痰少粘稠、喀痰しにくい、血痰→肝火により肺熱が生じ、津液が灼傷されて痰になり、量は少なく粘り吐き出しにくくなります。熱が肺の経絡を傷めると出血して血痰になります。
胸脇の脹痛→気が停滞すると脹るような痛みになります。強い咳で胸が痛むというのではなく、脇や肋骨・乳頭の辺りに脹痛を感じます。これらは肝の経絡が通る部位なので、肝の機能が失調すると症状が現れやすいのです。
体が熱っぽい→肝火により内熱が生じるため、体に熱がこもるような熱さを感じます。
肝の「疏泄を司る」働きには、情志を伸びやかにする…という作用があります。疏泄機能が正常ならば、気の巡りは伸びやかで気血は調和し情緒は楽しく明朗です。
逆に、ストレスや緊張・怒りなどマイナスの情緒刺激が強くおこったり続いたりすると、必ず肝気は鬱結し疏泄機能は失調してしまいます。「肝は抑鬱を悪む(憎む)」といわれています。
したがって、肝気鬱結や肝火による病証は、特にマイナスの情緒刺激により症状が発症したり悪化することが多いのです。
舌紅苔黄→熱があることを示す舌象です。
脈弦数→弦脈とは、肝の病証に多い脈象です。数は熱があることを示します。
弁証
肝火犯肺証、肝火証など。
五行学説では、肝は自然界の木に属し、肺は金に属します。正常な関係では、肺金(刃物)が肝木(木)の勢いが亢進し過ぎないよう、抑制する働きをしています。
肝火犯肺証では、肝が肺を傷めるという逆向きの作用がおこっています。これを別名「木火刑肺」(肝火が肺を責める)といいます。
立法
清肝瀉肺化痰、清肝瀉火止咳、清肺平肝と順気降火 など。
どれも肝火や肺熱を冷まし、咳を鎮めて痰を取り除くという意味の表現です。
方剤
瀉白散加減、または 瀉白散加減と黛蛤散 など。
瀉白散は清肺順気化痰の効能があり、黛蛤散は清肝化痰の効能があります。「白」は五行学説では、肺を表す色です。ちなみに肝は青、心は赤、脾は黄、腎は黒です。
よく使う食薬
清肺平肝するもの・・・セロリ、蒓菜(じゅんさい)、白菜、トマト、スベリヒユ、菊花、薄荷、山梔子、蒲公英、決明子、天花粉など。
清熱類・・・豆腐、バナナ、梨、茶、荷葉、金銀花、板藍根、夏枯草など。
理気化痰するもの・・・大根、オレンジ、みかんなど。
止咳化痰類・・・海苔、昆布、筍、ヘチマ、貝母、栝楼、竹茹など。
弁証施膳の例
アサリとくちなしの簡単ピラフ
アサリむき身300g、トマト大1個、セロリ1/2本、玉ねぎ1/2個、昆布10㎝角、くちなしの実2個、米2カップ、オリーブ油適宜、バター少々、塩コショウ、固形スープの素。
①くちなしの実は砕いて、2カップの水に1時間ほど漬けます。その後、火にかけ弱火で蓋をして20分ほど煎じて液をこしておきます。
②昆布は水に漬けて戻し、細く刻みます。セロリ・玉ねぎは粗みじんに、トマトはざく切りにします。米は洗ってザルにあげておきます。
③鍋にオリーブ油を温めてセロリ・玉ねぎを炒め、軽く塩コショウします。
④米と①のくちなし液を合わせて炊飯器に入れ、不足分の水を加えてふつうに水加減します。昆布・アサリ・固形スープの素も合わせて、味を調え炊飯します。
⑤炊き上がったらトマト・バターを加え、さっくりと混ぜ合わせてください。
ポイント
活アサリを使うなら、砂抜きして酒少々で蒸し焼きにしてむき身を作ります。蒸し汁は炊飯のくちなし液に加えます。
アサリは清熱化痰の作用を持っています。アサリと昆布の旨味が効いているので、薄味に作ってもおいしく食べられます。
オリーブ油を少なくして、米も通常のピラフのように炒めないのであっさりとしていますが、仕上げにバター少々で風味を加えています。
くちなしは、中薬としての名前は山梔子(さんしし)です。お正月の栗きんとんの色つけにつかいますよね。薬臭さがなく、とてもきれいな黄色に仕上がるのでお米の料理にもおすすめです。
清熱利湿・瀉火除煩の効能で、熱証やのどの渇き、黄痰などを改善する働きがあります。
我が家では、梅雨~盛夏に清熱解毒作用を持つ緑豆と合わせて、黄色い豆ごはんを炊きます。おいしいですョ。
次回は、肺と腎が関わる咳・喘息についてです。
お付き合いいただきありがとうございました。
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