咳・喘息に7つのタイプ?原因と薬膳処方その3・弁証論治トレーニング⑯
季節性のある咳・喘息は、今回が最後です。 秋に多く見られるタイプで、乾燥した症状が中心です。
症例⑯
空咳、コンコンと咳き込みが続く、のどがイガイガと痛痒い、のどが乾燥して痛い、痰がない、痰は少なく粘るか血が少し混じる、痰を吐き出しにくい、口や鼻・唇が乾燥する、鼻詰まり、頭痛、発熱、悪風、舌紅少津、苔薄黄、脈浮数など。
症状の分析
空咳、咳き込みが続く、のどの痒み痛み→風燥の邪気が肺の「宣発粛降を司る」働きを失調させるので、全身に津液(体に必要なよい水分)を散布できなくなります。このため口唇・鼻が乾燥します。
肺自身も潤いを失うため、乾いた咳や続けて咳き込むなどの症状が現れます。
風燥邪気とは、風邪と燥邪が一緒になったものです。燥邪は高温多湿の夏から一変して、空気が乾燥し冷えてくる秋によく体を傷める代表的な邪気です。乾燥性の特徴があります。
痰が少ない、粘る、吐き出しにくい、鼻詰まり→燥邪は津液を消耗しますが、熱が加わるとより強く灼傷します。肺と密接の関わるのどや、肺が開竅する(通じる)鼻が乾燥し、痰も水分を失い無痰や少痰で粘り、吐き出しにくくなります。
血痰→熱の度合いが高くなり、肺の経絡を損傷すると出血し、痰に血が混じります。そうなると咳き込みは一層ひどくなり、のど・胸(肺)の痛みを強く感じます。
頭痛、発熱、悪風→カゼの初期症状です。悪風(おふう)とは悪寒(おかん)より程度の軽いものです。冷たい風に当たるとゾクッと寒気を感じることです。
舌紅少津、苔薄黄→熱があることを表します。健康時は淡紅色の舌は、熱があると赤味が強くなってきます。少津は津液が不足し潤っていないことです。
脈浮数→カゼのひき始めの脈象です。
弁証
風燥慯肺証、風燥証 など。
立法
清熱潤肺止咳 または 疏風清肺と潤燥止咳 など。
方剤
桑杏湯・・・秋のカゼによく使います。肺の熱を清めて潤し、宣発粛降の働きを回復させます。清肺止咳潤燥の作用を持つ桑葉は辛涼解表類、杏仁は止咳平喘の作用をもつ止咳平喘類で、この両者を主薬としています。
秋の初め、夏の余熱が残る頃・立秋~秋分を「温燥」といい、秋の後半で寒さが増してくる頃・秋分~立冬を「涼燥」といいます。
涼燥には、杏蘇散もよく使われます。辛涼解表類の桑葉に替えて、辛温解表類の紫蘇が主薬に入ります。このように、自然環境に変化や症状に細やかに対応する方剤の内容を知ることは、薬膳を考えるうえで大変役に立ちますね。
よく使う食薬
滋陰類(滋陰潤肺するもの)・・・銀耳(白きくらげ)、松の実、白ごま、百合根、イチゴ、小松菜、アスパラガス、豆乳、牛乳、豚肉、イノシシ肉、ホタテ、沙参、玉竹、黄精、麦門冬、など。
化痰止咳平喘類・・・アサリ、枇杷、梨、柿、羅漢果、貝母、杏仁など。
注意点・・・体を熱くするもの、辛味刺激性のものは津液を消耗するので控えます。ネギ、生姜、唐辛子、酒、肉桂、山椒、胡椒、丁香など。
弁証施膳の例
柿と梨、レンコンの松の実白和え
①柿と梨は皮をむき、いちょう切りにする。レンコンは皮をむき小口に切って軽く湯通しして水気を切る。
②水切りした豆腐、練り白ごま、出汁少々、薄口しょうゆ少々で白和えの和え衣を作る。
③煎った松の実と①②を合わせて和える。
豆腐は涼性で清熱生津し、レンコンは生に近い状態で清熱生津に働くので、滋陰潤肺止咳のものと合わせています。
カゼの初期に咳はよく現れる症状ですが、ご存知のようにカゼへの適切な対応を間違うと、カゼをこじらせて喘息や肺炎など重い病症に進行することはよくあります。
喘息とは
中医学では哮喘(こうぜん)といいます。哮は発作的に痰鳴がして、呼吸が浅く促迫し呼吸困難になります。もともと肺に痰湿が停滞していると、何かの刺激で発作がおこります。
喘は、呼吸困難のことで、口を開き肩で息をする、鼻翼がぴくぴく震えるほど苦しい呼吸、横になることができないなどの特徴があります。
ポイント
呼吸器系の症状が現れやすい人は、ふだんから気候変化に注意して体を冷やさないように注意し、タバコやほこりなど刺激性の気体を吸い込まないように注意が必要です。肺気をはじめ、気を充実させるためには体の根本を鍛えることも大切です。適度な運動や気功などを取り入れることをおすすめします。
次回からは、臓腑機能の失調が原因の咳・喘息についてです。
お付き合いいただきありがとうございました。
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