糖尿病は三多一少・その1、弁証論治トレーニング⑪


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予備軍も含め日本人の多くが抱える糖尿病。いくつかのタイプに分かれていますが、健康志向の高まりとともに、ご本人の自覚がないうちに診断で見つかり、薬剤による治療・食事療法・運動療法の指導を受けみなさん回復に向け努力されています。

中医学では、古典に糖尿病の特徴的な症状の記述があり「消渇」(しょうかつ)と名付けられています。特徴は三多一少(さんたいっしょう)といい、三多は多飲・多食・多尿、一少の少は消痩・やせるという意味です。

今日からは3回の弁証論治トレーニングを通じて、消渇証についてお伝えします。


症例⑪

もともとお酒や肥甘厚味(油っこいもの、甘いもの、味つけの濃いもの)が好きでよく食べる、タバコも吸う。

ここ半年ほどよく喉・口が渇き、たくさん水を飲むようになった。水を飲んでもあまり乾きが治まらない。水を飲むとすぐ尿意をもよおす。尿量は多く、回数も多い。舌紅、舌苔黄、脈数。

 

症状の分析

喉・口の乾き→燥熱で肺の津液が消耗しているため、潤すことができません。

肺は水の上源といいます。脾で作られた津液(体のよい水分)は、まず五臓六腑の中で一番高い位置にある肺まで運ばれ、「肺は宣発粛降を司る」働きによって津液を全身に散布します、イメージできますか?

1.宣発・・・肺の呼吸の呼に関わります。脾から運ばれてきた津液や水穀精微(気血津液精のもとになる営養物質)を上向きや体表に向かうという宣発によって全身に送り出し、皮毛を営養し、衛気を体表に巡らせて体を守り、体表や毛穴をコントロールし汗を管理する作用です。

2.粛降・・・肺の呼吸の吸に関わります。脾から運ばれてきた津液や水穀精微を下向きや体内に向かうという粛降によって臓腑に運び営養します。体に新鮮な空気を取り入れて宗気を生成して丹田(へその下)にまで巡らせ、元気を補充します。呼吸器官の汚れや廃物を取り除きます。

3.通条水道・・・宣発粛降によって津液を全身に散布し、臓腑を営養し潤しながら、水を腎と膀胱に送り(腎の気化作用によって)尿を作り排泄します。体の上(上源は肺)から下(下源は腎)までの水液代謝に関わる働きを通条水道といいます。

説明が長くなりましたが、1.2.3 を合わせた働きをまとめて「宣発粛降」といいますが、燥熱によって肺のこの働きが失調すると、前述のように喉・口が渇き、水を飲んでも潤すことができません。

 

多尿頻尿→水をたくさん飲んでも全身に散布できず、すぐに下に降りてしまうためです。

舌紅・苔黄→内熱・体に熱がこもっていることがうかがえます。

脈数→熱があることを示す脈象です。

 

では、そもそもの原因は何でしょうか?

ここでは飲食の不摂生が書かれています。肥甘厚味の過食や飲酒により脾胃が痛むと、「脾の運化を司る」働きが失調します。すると飲食物や水液が停滞し湿を生じます。湿の停滞が続くと化熱(熱を生じる)し、湿はますます濃くなりしつこく停滞します。

脾胃で生じた熱ですが、なぜ肺にも作用するのでしょう?一般的に熱は上に向かって伝わりやすいものです。タバコは、熱い煙を直接肺に吸い込むのですから、なおさら肺に燥熱を与え傷めます。

胃や肺にこもる熱で津液が消耗し喉・口が渇き、口臭などがおき、舌苔は黄色く厚くなっていきます。

湿の停滞は、正常な津液の散布や代謝を阻滞するので、臓腑・組織は潤されず渇きや乾燥の症状が現れるのです。

ふつうは湿が停滞すると、むくみや下痢などの症状が現れると覚えますが、このようなケースもあることを知っておきましょう。

なお、湿に限らず気・血も流れが阻滞される状態が続くと化熱し、熱の症状が現れてきますョ。

 

弁証

消渇証の上消(じょうしょう)、肺熱津慯証など

消渇証には症状に関わる臓腑によって3つに分けられています。

上消(肺)、中消(胃)、下消(腎)です。この順序は、消渇証の進行する順番と、症状の重さを表すことが多いです。上消はまだ病気の進行は浅く軽症、中消は進行がすすみ中症、下消はかなり進行して重症であると考えることができます。

 

立法

清熱瀉火・生津止渇

熱を冷まして津液や体の陰が消耗するのを防ぎ、津液の生成を促して陰を潤し、渇きを止めます。

 

方剤

消渇方(しょうかつほう)・・・ズバリ消渇のための方剤、覚えやすいですね。白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)も熱感や口渇が強く、熱で気を消耗しているときに合います。

 

よく使う食薬

清熱類、滋陰類、平性、涼性のものを使います。

白菜、キュウリ、トマト、セロリ、苦瓜、レンコン、梨、茶、松の実、緑豆、豆腐、湯葉、豆乳、牛乳、卵、白きくらげ、白ごま、鴨肉、豚肉、馬肉、葛根、百合根、麦門冬、玉竹、沙参、生地黄、天花粉、金銀花など。

 

弁証施膳の例

お粥やスープのほか、苦瓜・木綿豆腐・卵をあっさり塩味で炒めたゴーヤーチャンプルーなどもおすすめです。喉の乾きが強いので、ジュースのように冷やしたものもいいですが、甘味の扱いには特に注意が必要です。


消渇証の第1回目は、肺熱(胃熱もある)で津液を消耗し、多飲を特徴とする上消でした。理解の助けにはなったでしょうか?

次回は中消についてです。お付き合いいただきありがとうございました。

 

 

 

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