薬膳師・中医師資格試験の必修!弁証論治トレーニング⑨

薬膳師や中医師をめざしてがんばっているあなた、お疲れさまです!理解はすすんでいますか?何よりもまず、初めてみる難しい漢字や語句に戸惑い、独特の理論や概念にどうにかついていくだけ。覚えることが多くて必死!・・・そんな日々だったのではないかと思います。
今まで勉強したことはすべて「弁証論治」「弁証施膳」できるようになるためのものでした。あなたにとって弁証論治できることが、まずは目指すゴールです。
もう春には資格試験を受けるのでは?絶対に合格しましょうね!暗記問題が多くて大変ですが、弁証論治の方は配点が高いんですョ~。
中医薬膳師・国際薬膳師・国際中医師
薬膳師・中医師資格試験の必修!
弁証論治トレーニング
私は、勉強したことをちゃんと覚えられたか?勉強したことが使えるスキルになっているのか?限られた時間の中で病症を分析し、証に収め、適切な薬膳や方剤を提案できるか?を弁証論治トレーニングで力試ししてみましょう。最初はテキストから答えを探しながらでいいんです。いろいろな症例を自分の言葉でまとめてみると実力がつきますよ。
症例⑨
40歳 女性、診察日6月10日。便秘に悩んでいる。いつも便秘気味だが、生理中は特に便が硬くウサギの糞のよう、生理は遅れがちで経血が少なく色が薄い。頭がふらふらしたりめまいがする、動悸、顔色が白い、唇や爪の色が薄い、ときどき耳鳴りがする、足腰がだるい、舌質淡、脈細渋。
症状の分析
主訴は常習的な便秘である。
40歳→中年期で、体が虚してきている恐れがある。
ウサギの糞のような硬い便→血虚便秘の特徴。
特に生理中に便が乾結する→血虚が疑われる。陰液(血・津液)不足は腸の乾燥をひきおこすが、生理中ということから、特に血不足と考える。
生理の遅れ・経血少ない・経血薄い→血虚が疑われる。経血に関わることから肝血虚が疑われる。
頭がふらつく・めまい→血不足で脳が営養されない。
動悸→心血不足が疑われる。心は血脈を司る働きがあるが、心が営養されず機能が失調するため。
顔色白い、唇・爪が淡白→血に滋養されないため。
耳鳴り→音の特徴(音の高低や大きさ)が不明だが、耳近くを経絡が通る肝か、耳に開竅する腎が失調していることが疑われる。
足腰だるい→腎が虚している疑いがある。熱や冷え、尿のトラブルなどの情報がないので腎気・腎陰・腎陽・腎精いずれが虚しているかは断定できない。
舌質淡→淡は淡白。気血両虚、寒証、陽虚証などに見られる。健康な舌質は淡紅である。
脈細渋→血虚に見られる脈象。
症状の一つ一つについて、丁寧に分析する習慣をつけることが大切です。考えられる可能性をいくつでもあげてみましょう。書かれている症状から想像を広げることと、書かれていない症状を勝手に想像することは違います。
ポイント
答案用紙に分析した内容を書くときは、箇条書きにするといいですよ。すべてかけなくても、60~70%は分析できるようになりたいですね。
症例⑨では書くべき部分に下線を付けています。箇条書きは分析したことを証に収めるときに分りやすいです。
弁証
血虚便秘証 または 血虚証による便秘 など。
学習した病証から当てはまる証名が書けるといいのですが、忘れてしまったときは複数に分けて書いたり、最悪自分で作ってでも…。白紙で提出しないよう何か書いてくださいネ!!例えば心脾両虚証なら、心血虚証と脾気虚証とか…心血脾気虚証…なんてね。◎でなくても、△はもらえるかもしれませんョ。
出題された症状から分析すると、弁証の答えは、いつも1つだけとは限らないものです。実際の医療の現場でも、医師によって見立てが違うことはあることです。といって、あまりに的外れは困りますが…。
立法
養血潤腸通便 または 養血潤燥と通便 など。
ポイント
症状の分析の中に、肝と腎の関わるような部分があったことに気がつきましたか?年齢から推察して、まだ症状が現れてはいないものの「肝腎陰虚証」に進行する可能性を感じますね。血虚は陰虚になりやすい…といいますから。
中医学は「治未病」を重視しています。弁証施膳では、できればですがそのあたりをフォローしておきたいものです。
弁証論治をまとめてまだ時間に余裕があれば、この血虚便秘の患者さんに対するアドバイス(食事や生活)も考えてみましょう。得点に直接結びつかなくとも、今後の薬膳師・中医師ライフに役立ちます。
例えば、血の消耗につながるので過労やストレスを避ける。温熱性の飲食の過食や方剤の使い過ぎは、陰液を消耗させるので控える。堅い食物繊維の多い食事は消化吸収しづらく栄養を効率よく作れない。濃いお茶などタンニンの多い食物は鉄分の吸収を妨げる・・・などです。
方剤
潤腸湯・・・血虚便秘証の代表的な方剤です。どうしても思い出せないときは、初級者の人なら 四物湯と麻子仁丸、あるいは麻子仁丸だけでも〇もらえるかもしれません。
よく使う食薬
養血類・・・レバー、ニンジン、ほうれん草、落花生、イカ、ブドウ、ライチ、黒ゴマ、当帰、竜眼肉、何首烏、熟地黄、白芍、阿膠など。
瀉下類・・・無花果、ハチミツ、麻子仁、郁李仁など。
食薬は、その分類や効能が設問となりますが、薬膳を考えたり方剤を覚えるときにも必ず必要です。代表的な食材と中薬は最低でも5種類、できれば10種類は覚えましょう。
弁証施膳
今回はレシピ紹介ではなく、弁証施膳の出題に対してどう答えるかを考えてみます。
仮に「レバーとホウレンソウ、ピーナッツの炒め物」を書くとしましょう。
まずレシピ名は、どんな食薬を使ったものか採点者に分るようにします。これがたとえば「ポパイの元気炒め」(キャラがちょっと古いですが…)だと、何が入っていて、何が改善されるのか分りませんね?使う食薬で、何を目的に立膳するかをアピールしましょう。
炒め物・・・これは簡単な調理方法ですね?限られた時間、限られた答案スペースにまとめるには複雑な調理法は向きません。お粥、スープ、煮込み、お茶、あえ物、炒め物など簡単な調理法ですぐに書けるように練習しましょう。
病症によっては、油を多く使うもの、冷たい料理、生野菜サラダなどが控えるべきものになっています。一般的に温かく、薄味で、消化のいい調理法なら間違いありません。煮る・蒸すがよく、炒めるもよく使われます。
さて症例⑨の分析を思い出しましょう。この立膳では、通便に対する食薬が少し足りないように思えます。(初級者の人はこのままでもいいです)
たとえば、ピーナッツを黒ゴマに替えると通便の作用はアップします。ピーナッツも油分を豊富に含み腸を潤しますが、黒ゴマはさらに食物繊維が豊富ですね、替えてもいいかもしれません。仮に渋皮つきのピーナッツだと、渋皮は収渋作用で便の排泄を邪魔する作用も考えられます。麻子仁は麻の実(ヘンプシードナッツ)、風味のいい種実です。こちらは殻付き殻無しどちらも便秘には使えそうです。このように、時間のある時に食薬について使い方を考えるのはいいトレーニングになります。
また「治未病」として、肝腎陰虚の防止のために、たとえば枸杞子(クコの実)を加えてはどうでしょう?答案用紙には、分析から肝腎陰虚に進む恐れがあるので肝腎の陰を補うクコを加える…のような説明を少し入れておきましょう。何も分らないでクコを使っていると思われては困りますものね!
弁証論治トレーニングいかがでしたか?症例を見ても、最初はどこから手をつけたらいいかが分らない!って感じましたよね。どんな症例に対しても、いつも同じ手順で取り組んでみましょう。病気は違っても、たびたび似たような症状が出てきます。見慣れてくると分析がスムーズになりますよ。
しばらくは弁証論治トレーニングを投稿する予定です。ご一緒にがんばりましょう。
お付き合いいただきありがとうございました。
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