疲れるし眠れない…弁証論治トレーニング⑦

症例
35才・男性。10月12日受診。
夏から転職のため就職活動中だが、希望通りの仕事がなく悩んでいる。最近寝つきが悪く、よく夢を見て眠りが浅い。倦怠感があり、動悸がする、前向きな気持ちになれず集中力に欠ける。お腹が張って食欲 不振、食後に一層疲れを感じる。自汗、顔色悪い、舌淡苔薄、脈細弱。
分析
就職活動が不調→ストレスや悩みを抱えている。
倦怠感、腹脹、食欲不振、食後に増悪→脾気不足。
自汗→気虚の汗のかきかた。
寝つき悪い、眠り浅い、多夢、集中力に欠ける→過度の思憂は脾を傷める。脾気不足から気血の生成不足が疑われ、心血不足から心神の不寧(安定しない)をひきおこしていると思われる。(心血が神を養え ない)
動悸→心血不足。
前向きな気持ちになれない→心神不寧か、気虚のせいだと思われる。(ストレスで肝鬱も選択肢だが、 ほかに肝の症状が見られないため除外する)
顔色悪い→どんな色か不明だが、気虚で萎黄や血虚で蒼白、ツヤがなくくすんだ感じが、ほかの症状から考えられる。
舌淡苔薄→手がかりとなる情報がないが、熱や冷えの症状がないことはわかる。
脈象→虚証。
弁証
心脾両虚証、気血両虚証
立法
補脾益気・養心安神(養血安神)、補益心脾など。
よく使う食薬
補脾益気・・・穀類、芋類、カボチャ、カリフラワー、干し椎茸、吉林人参、黄耆、白朮、 大棗(ナツメ)など。(血の生成には気が必要、気生血)

滋陰養血・・・イカ、レバー、スペアリブ、牡蠣、ニンジン、ブドウ、 ライチ、黒ゴマ、松の実、枸杞(クコの実)、竜眼肉、当帰など。(血は陰に属しているので滋陰類も使える)
安神・・・蓮の実、大棗、竜眼肉、百合根、酸棗仁など。
方剤
帰脾湯・・・脾気虚と心血虚が同時に見られる心脾両虚証の代表的な方剤。人参や黄耆、大棗などで 補脾益気し、当帰で肝血を養い心血を生じさせる。酸棗仁・竜眼肉・茯神で養心安神する。
弁証施膳
牡蠣とニンジン・松の実炒め(2人分)

牡蠣150g、ニンジン50g、松の実大さじ2、生姜・白ネギのみじん切り 各小さじ1、酒・塩コショウ・油 各適宜。好みでオイスターソース。
作り方
牡蠣は洗って、熱湯にくぐらせてふっくらさせ、よく水けを拭いて塩コショウする。ニンジンはさいの目に切って下茹でする。松の実は軽く煎っておく。 フライパンに油を熱し、生姜・ネギを炒め香りが出たら牡蠣・ニンジン・ 松の実を手早く炒め合わせて酒少々をまわしかける、好みでオイスターソースを加えてもよい。塩コショウで味を調える。
牡蠣の滋陰養血、ニンジンの養血と補気、松の実の滋陰と、似た効果のあるものの組み合わせです。 ピーナッツだと養血に作用します。下準備をしておけば仕上げは手早く炒めるだけの簡単メニューです。
ポイント
症例の男性は、しっかり気血を補うものを食事に取り入れることはもちろん、ときどき休憩して気分転換を図ったり、バスタイムを利用してリラックスを心がけることをすすめます。特に寝る前ギリギリまで 考え事や就活の準備をしないようにメリハリをつけることが大切です。

ナツメやレーズンはドライフルーツで入手しやすく、携帯も楽なのでバッグに常備しておくと、疲れを癒すのに役立つことでしょう。ガンバレ!
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