冷たい雨に濡れて生理痛が酷くなった…弁証論治トレーニング⑥
弁証論治トレーニングは久しぶりです。くりかえし、いろいろ自分で考えてまとめてみることが理解への一番の近道です。まずは症例だけ見て、自分で分析して書いてみましょう。まとめ方は簡単に箇条書きでいいですよ。

症例
26才女性、診察日12月20日。ここ数日、屋外でクリスマスイベントの準備をしている。雨の中で作業を していたら、いつになくひどい生理痛で受診した。お腹が冷えて下痢をしている。特に下腹部に引きつれるような痛みや、ひどい痛みがあり押さえるとよけいにひどくなる。カイロを貼り温めると少しよく なった。手足が冷たい、唇と舌が薄く紫がかった暗い色、舌苔白潤、脈沈緊、経血は少なく色が暗い、 ときどき出血に塊がある。
分析
12月・雨の中での作業→寒邪や寒湿の邪気を受けた疑いがある。寒と湿はよく一緒になることがある。 生理中は、気血が消耗し空虚になっているので邪気を受けやすくなる。
お腹が冷えて下痢→寒または寒湿邪気が脾気を阻滞し運化を司れない。
下腹部の痛み→寒または寒湿邪気が、衝任の経絡の流れを阻滞し子宮が冷えている。寒邪の凝滞性で引きつれるような痛み、瘀血を生じていて刺痛のひどい痛みと拒按。温めて緩和するのは寒邪、気血の流れが少し改善するため。
手足が冷たい→寒または寒湿邪気で、気血の流れが阻滞され温められない。
唇・舌が薄い紫・暗色→寒証や血瘀証に見られる。
舌苔白潤→苔白は表証・寒証に見られる。潤は正常の範囲で、症例は熱や虚証ではないように見受け られる。
脈沈緊→寒邪による凝滞性が疑われる。
経血が少なく暗色、ときどき塊ある→量少は血虚も考えられるが、ほかの症状と合わせてみると寒邪に より気血の流れが阻滞されているためと思われる。暗色も寒邪や瘀血が疑われる。出血の塊は瘀血。
弁証
寒凝胞宮証、宮寒血瘀症、血寒血瘀証
立法
温経散寒・活血化瘀・止痛、温経活血化瘀・止痛など。
よく使う食薬
活血化瘀類、温裏類、(理気類)。
姜黄(ターメリック)、肉桂、乾姜、小茴香、紅花、丹参、三七、川芎、当帰、酒、酢、ラッキョウ、 青梗菜など。
ポイント
生理痛は弁トレ③でも練習しましたが、今回はタイプが違います。③では腎がまだ未熟で虚証の症状 でしたから、補腎の食薬を使いました。
こちらは寒や寒湿の邪気による実証です。ですから、寒邪と瘀血を取り除かなければ改善しません。 生理の症状には、ほかにもさまざまな原因があるのでよく分析しましょう。
なお、生理痛は生理の前に痛むものは実証。生理後に痛むものは虚証のことが多いです。生理で気血消耗したためです。痛みの質はひどくなく、シクシクと痛む隠痛になります。生理中の痛みは、虚実どちらもあります。
気血の流れの滞りは、基本は温めて改善するです。辛味・温性(熱性)をすすめます。理気類は「気血 同行」の考え方から加えています。
なお、症例には 雨の中で…という説明があります。症状の中に寒湿によるものが書かれていると、弁証は「子宮寒湿証」の方がより該当する場合もあります。
方剤
温経湯(うんけいとう)
呉茱萸と桂枝を主にした温経散寒に、当帰・白芍・川芎で養血活血調経、牡丹皮で活血祛瘀する。陰血 不足による(手足のほてりや口の乾きなど)寒熱・虚実錯雑に対する養陰潤燥のものも配伍されている。
寒邪で瘀血を生じた生理痛・生理不順によく使われる方剤です。このほか、艾附暖宮丸(がいぶだんきゅうがん)もありますが、温経養血には温経湯より優れますが、化瘀には劣ります。
弁証施膳
鶏とニラのエスニックスープ(2人分)

鶏モモ肉100g、ニラ1束、玉ねぎ1/2個、カレー粉大さじ1、シナモン パウダー少々、ニンニク・生姜のみじん切り各大さじ1/2、 酒・塩コショウ・油各適宜、好みでみかんの皮1/2個分。
作り方
鶏を一口大に切り塩コショウする。ニラはざく切り、玉ねぎは薄切りにする。みかんの皮はよく洗って白いワタを取り、オレンジ色の部分を千切りにする。
鍋に油少々を入れ、ニンニク・生姜・鶏を炒め、カレー粉とシナモン、玉ねぎも加えて炒める。
水をひたひたより少し多めに入れて煮込み、酒・塩で味を調える(スープの素でもよい)。仕上げに ニラと、好みでみかんの皮を入れ軽く煮立てる。
体を温める食材の鶏とニラを、カレー味のスープにしました。カレー粉に多く含まれるターメリックは「姜黄」(きょうおう)という辛温の性質を持つ活血化瘀類です。エスニックの複雑な風味づけにシナモンを加えますが、これは体を強く温める「肉桂」(にっけい)という温裏類です。生姜・ニンニクも体を温めます。また玉ねぎは活血と理気の作用を持っています。
みかんの皮は、理気類といい、気の流れをよくする作用があります。「気血同行」といって気血は常に 一緒に体を巡っているという中医学の認識です。そのため、血流をよくするために気の巡りをよくする ものを一緒に使うのです。
もっと簡単に薬膳茶でも効果を得られますョ!
姜紅桂茶

生姜8g、紅花3g、肉桂1g、好みで黒砂糖を加える。
弁トレ③に桂枝を加え、さらに温める作用が強くなります。生姜は薄切りに して、材料すべてポットに入れて熱湯を注ぎ、10分ほど蒸らして飲みます。 子宮の寒凝、腎陽不足、気滞血瘀いずれの生理痛にも使えます。
この投稿へのトラックバック
トラックバックはありません。
- トラックバック URL
この投稿へのコメント