内臓下垂?…弁証論治トレーニング解答⑤
弁トレ⑤です、ガンバレ~。
症状
45歳女性、半年ほど疲れやすく、めまい、手足無力、顔色萎黄、足がむくむ、自汗、食欲なく食後にお腹が張る、下痢しやすい、子宮や肛門の下垂感、舌淡胖大苔白、歯痕、脈虚。
分析
45才→中年期で体が虚していると思われる。
疲れ、めまい、手足無力→脾気不足で運化を司れないと水穀精微を化生できない→筋肉が営養されない、営養が頭部に及ばない(昇清できない)。
顔色萎黄→同上。頭面部を営養できない。
食欲ない食後にお腹が張る→脾が運化を司れず痞えてくる。消化吸収に脾気を消耗する。
むくみ、下痢→運化を司れないと昇清できず、水液が下に(腸に)降りる、皮膚に溢れてむくむ。
自汗→気が虚すと固摂作用が低下し腠理の開閉がゆるむ。かってに汗が漏れ出てしまう。
子宮や肛門の下垂感→気の固摂機能が低下し、内臓の位置をしっかり支えられない。全体に気が虚して いることと、年齢からみて腎気も虚している疑いがある(子宮や二便とも関わる臓なので)。
胖大舌、歯痕→気虚に見られる舌質、運化を司れず水湿が停滞する。苔白も湿の存在を疑わせる。
脈虚→虚証の脈
弁証
脾気虚証、脾気下陥証(中気下陥証)、気陥証のいずれかでよい。
立法
健脾化湿と益気昇陽、補中昇陽 など。
食薬
補気類に昇陽するものを組み合わせる。補気類の黄耆は代表格。昇麻・柴胡は解表類だが、昇気するので使える。健脾する際には、利水滲湿や燥湿するものを合わせるとよい。 脾の負担を軽くできる、脾は温かく乾いた環境でよく働く臓なため。補気には理気を加えて、気が滞らないように工夫する。
弁証施膳
補中益気鶏
(材料4~5人分)丸鶏小さめのもの1羽、吉林人参・黄耆 各10g、白朮6g、陳皮3g、棗4個、 干し椎茸4枚、じゃがいも・にんじん・キャベツ各適宜、白ネギ1本、生姜20g、 酒、塩、しょうゆ各適宜。

作り方
①丸鶏は中をよく洗い湯通しして、熱いうちに中を酒と醤油ですすぎ水気を切っておく。
②黄耆と白朮は1時間ほど水に漬けて30分ほど煎じ、煎汁を取っておく。 吉林人参も別に水に漬けておく(水は捨てない)。
③鶏に中に戻した干し椎茸と吉林人参、棗、陳皮、ネギ、生姜、を詰めて鍋に入れる。
④③に椎茸の戻し汁、黄耆と白朮の煎汁、吉林人参の漬け水、酒を入れて 水加減し、40分ほど煮込む。
⑤大きく切ったにんじん、じゃがいも、キャベツを入れて塩で味付けし柔らかくなるまでさらに煮込む。仕上げにしょうゆ少々で味を調える。
食薬の効能
吉林人参・・微温性・甘味・微苦味、脾肺に帰経、大補元気、補脾益肺。(写真上)
黄耆・・・・微温性・甘味、脾肺に帰経、補気昇陽、益衛固表、托毒生肌。
白朮・・・・温性・甘味・苦味、脾胃に帰経、健脾益気、燥湿利尿、止汗。
棗・・・・・温性・甘味、脾胃に帰経、補中益気、養血安神。(写真下)
陳皮・・・・温性・辛味・苦味、脾肺に帰経、理気健脾、燥湿化痰。
鶏・・・・・平(温)性・甘味、脾胃に帰経、補中益気。
椎茸・・・・平性・甘味、胃に帰経、補気益胃。
にんじん・・平性・甘味、肺脾に帰経、養血益肝健脾。
キャベツ・・平性・甘味、胃腎に帰経、補腎益胃。
じゃが芋・・平性・甘味、胃大腸に帰経、補気健脾。
ポイント
中気下陥に、まず最初にすすめる方剤「補中益気湯」から名前をもらいました、昇麻と柴胡、当帰は 入っていませんが…。丸鶏からおいしい出汁が出て、吉林人参の薬臭さは気にならないと思います。 スープに薬効がたっぷり出ているので、残さずに飲んでください。体が温まり元気が出ますよ!鶏の中に一緒にお米を詰めてもいいですネ。ほかにも使えるお野菜がたくさんありますョ。
薬膳メニューの名前をつけるときには、何を目的としているのか?、何を使っているのか?などが はっきりわかる名前にしましょう、課題の提出や試験の時には大事なことです。たとえば、「人参と棗の補気粥」などとすると、補気という目的に吉林人参と棗を使って、お粥を作ったのだとわかりやすく、 調理法も合っていると相手に伝わりやすくなります。
おしゃれなネーミングや、メルヘン風の名前は食欲を誘いますが、一生懸命考えた肝心な意図することが伝わらないのです。
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