息を深く吸えない喘息・咳…腎の弁証論治② 腎不納気証
昨日に続き、腎気虚証のもう1つの証「腎不納気証」についてです。
私たちの呼吸が、肺が中心となって行われていることはみなさん知っていますね?実は、腎気も呼吸に深く関わっているんですよ。腎は人体の一番下に一番奥にあって、肺が吸い込んだ空気を引き込む役割を担っています。
②腎不納気証(腎気虚証の1つ)
腎気不固証で学んだように、腎気が虚すと固摂機能が低下しますが、それにより体の下の方から漏れ出るタイプの症状が現れます。尿や便、精液、帯下、流産などについて説明した通りです。
腎不納気証の方は、固摂機能が低下して吸気をしっかりと引き込み収めることができなくなり、呼吸に関する症状が現れます。腎の蔵精を司ると、水を司る働きと関わります。

症状と分析
腎気虚の主な症状は共通です。
喘息、呼気が多く吸気が少ない吸えない(呼多吸少という)、慢性の咳、息切れ→腎の納気(吸い込んだ気を収める)する働きが低下。
治療法
補腎納気:腎を補い、吸気を腎に収めるようにします。
食薬
納気する働きも固摂機能なので、腎気不固証と同様に補気類・収渋類を組み合わせます。
方剤
都気丸・・・六味地黄丸に、咳や喘息を止める働きがある収渋類の五味子を加味した組成です。腎気丸に加味してもいいでしょう。ほかにもいろいろな方剤があります。
ポイント
腎気不固証と、腎不納気証はそれぞれ特徴的な症状がありますが、どちらとも決められないとき、または両方の症状が混在しているとき弁証は腎気虚証でいいのです。
たとえばご老人で、喘息や気管支炎と慢性の下痢や尿漏れ、頻尿、前立腺肥大など複数の症状を持つことは臨床では珍しくありません。ただし、治療法や薬膳には書かれている症状に対応するものをきちんと 盛り込んでいきましょう。
方剤も、これだろうというものを選び、加味する中薬、減じる中薬を書ければいいのですが、そこまで できない場合は「加減」とつけ加えます。たとえば「腎気丸加減」という具合です。
次回の腎の弁証論治は「腎陽虚証」についてです。
お付き合いいただきありがとうございました。

この投稿へのトラックバック
トラックバックはありません。
- トラックバック URL
この投稿へのコメント