頻尿・尿漏れ、流産まで?…腎の弁証論治① 腎気不固証
腎と膀胱の疾病は、主に腎気虚証である腎不納気症と腎気不固症、腎陽虚証、腎陰虚証、腎精不足証の 虚証と、膀胱湿熱の実証があります。
ご覧の通り「腎に実証無し」といわれていますが、実際には腎臓ガンなどは実証といえます。 腎と膀胱は、足少陰腎経と足太陽膀胱経により表裏の関係になっています。
腎病の主な症状・・・足腰がだるい、疼痛、耳鳴り、耳が遠い、白髪、脱毛、歯の疾病、陽萎、遺精、 不育、赴任、生理不順、むくみ、尿の変化。
膀胱病の主な症状・・・頻尿、排尿時間が長い、尿痛、血尿、排尿困難。
ちょっと難しい表現がありますが、各病証の中で説明していきます。
腎気虚証
腎の水を司ると、納気を司る働きと関わります。これらは主に腎陽に関わります。
気虚証とは、虚弱体質や過労、慢性疾患、老衰などが原因で臓腑や組織の機能低下により現れる症候です。主な症状は、息切れ、疲れ、めまい、自汗、動くと症状が悪化する、舌質淡苔白、脈虚です。 これに腎の症状が加わると考えていいでしょう。
腎気虚証は、現れる症状により2つの病証に分けています。
①腎気不固証(腎気虚証の1つ)
気には、血液・精など大切なものが本来あるべきところから漏れ出てしまわないようにする役割があり ます。 これを固摂機能といいます。 腎の気が虚衰して固摂機能が低下すると現れる病証が腎気不固証です。腎の蔵精を司ると、水を司る働きと関わります。

症状と分析
疲労感、顔色が晄白(こうはく)、足腰がだるい→気虚の症状、気血が体・ 顔を滋養できない。 晄白はぼぅっとしたようなツヤのある白色、満月に例えられ、冷えの進んだ気虚や陽虚に見られる。腰は腎の府(家)といい、腎病には足腰のだるさ、疼痛が現れやすい。
耳鳴り、聴力低下→腎は耳に開竅する。気血が耳を滋養できない。
頻尿、尿漏れ、尿後すっきりしない、遺尿、夜尿、慢性下痢→腎気不固では、膀胱の尿をコントロールし開閉する機能が低下。腎は二便(尿・便)を司るともいう。
滑精(性交に関係なく精液が漏れ出ること)→腎は蔵精を司る働きが低下。
帯下(おりもの)が多い→腎の水を司る働きが低下し、水液を気化できない。この場合、帯下は薄く 水っぽい。
流産しやすい→腎は生殖に深く関わるがその働きが低下。胎児を子宮内に保つことができない。 腎気が虚してゆるむと、腎や子宮、膀胱などの気も弱まり位置もしっかり保てず下垂ぎみになる。
舌質淡苔白・脈沈弱→気虚に多い舌。沈脈は浮脈と反対で裏証、気虚や陽虚に多い。
治療法(立法)
補腎固気:腎を補い、ゆるんだ腎気を収めます。
食薬
補気類・・・穀類、芋類、栗、キャベツ、カリフラワー、鶏肉、牛肉、豚のまめ、うなぎ、白豆、 吉林人参、党参、太子参、黄耆、甘草、山薬など。
収渋類・・・烏梅、山茱萸、蓮子、芡実、烏賊骨、金桜子、桑螵蛸など。桑螵蛸はカマキリの卵ですョ!

気は陽に属しますから、補気には温かいメニューが合います。また、腎は冷えに弱く、冷えやすい蔵でもあります。このことからも温かい薬膳をすすめ ます。
方剤
腎気を補う基本の方剤は「腎気丸」(八味地黄丸に同じ)です。補腎固気の方剤には「牛車腎気丸」 などがあります。
腎気丸は、六味地黄丸といって三補(熟地黄・山薬・山茱萸)と三瀉(沢瀉・茯苓・牡丹皮)から構成 される滋補肝腎の代表的な方剤に、温める桂枝と附子を加えて八味にします。さらに車前子(利尿)と 牛膝(利尿、引経)を加えて「牛車腎気丸」となります。他にも方剤はたくさんあります。
次回は、もう1つの腎気虚証「腎不納気証」についてです。
お付き合いいただきありがとうございました。
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