肺は、君主に寄り添う側近の臓


昨日は、秋に働きが盛んになる肺の養生と、肺と美肌の関係について少し書きました。

肺ってただ呼吸のためだけの臓器じゃないんですね、今日はもう少し詳しく肺の働きについて説明します。


肺は君主に寄り添う側近?ここでいう君主とは、五臓六腑の中の「心」を指しています

肺は自ら呼吸して気を生成し、心の働き(血脈を司る)を助け、他の臓腑と協調して気・血・津液の調節に深く関わっています。黄帝内経には「相傅之官」と表現されていて、君主を助け、あらゆる調整役をする官房長官的なポジションだということです。

別名「華蓋の臓」ともいい、他の五臓六腑の一番上に位置し、気の昇降出入という重要な仕事をします。華蓋は、中国の歴史ドラマなどで王様の頭上に差し掛けてある美しく飾られた大きな傘のことです。イメージできますか?


肺の生理作用

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①肺は気と呼吸を司る・・・肺は五臓の中で最も気の生成と関わり、呼吸で取り入れた清気(新鮮な空気)は気を作る材料となり、吐き出す息では使い終わった濁気を排出しています(吐古納新と表現されます)。肺の宣発・粛降という作用で気は昇降出入し、この昇降出入を気機といいます。肺は全身の気機を調節しています。

 

②通調水道・・・からだの大切な水液(津液)の生成は脾胃の働きによりますが、その運行・輸布・排泄は肺の宣発粛降の作用が深く関わっています。この働きが失調すると、腠理(皮膚の表面・毛穴など)からうまく宣発できず無汗や浮腫がおこる。粛降がうまくいかず水液が下降しないと小便不利や浮腫がおこる。水液運行がうまくいかないと浮腫の進行や、痰飲が原因の病証が現れるなどがおこります。

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③宣発衛気・・・体には数種類の気が巡っていますが、体表を巡り外邪の侵入から体を守り、腠理を開閉して体温調節する気を衛気といいます。肺の宣発作用によって、衛気は体表に送られます。この働きにより、風邪の初期に悪寒や畏寒、汗出か無汗かなどが現れます。また、この機能が低下すると、外邪の侵入をゆるし風邪を引きやすくなります。

 

④朝百脈・・・百脈とは全身すべての血脈のことで、体をめぐる血は必ず肺を通り、肺で清気と濁気を交換することから百脈を朝る(あつめる)といいます。血を運行させる原動力は宗気といい、肺が宗気を作って心の血脈を司る働きを側近として補佐しています。

 

⑤治節を司る・・・治節とは調節のことです。肺が気の生成と昇降出入・津液の輸布と排泄・血の運行を助けるなど調節に深く関わっていることを表します。

 

⑥華は皮毛に現れる・・・皮膚や体毛は、肺の宣発粛降作用により散布される津液・水穀精微で潤い営養されています。肺の健康状態は皮膚や体毛に現れます。

 

⑦鼻に開竅(かいきょう)する・・・肺は鼻に通じて外界とつながっています。肺気の働きにより、鼻の嗅覚や通り、発生も正常に保たれます。

 

⑧液体は涕・・・涕(鼻水)は肺の液体として鼻腔を潤しています。鼻の病気を肺から治すこともあります。

 

⑨情志は悲・憂・・・肺と秋の関係は前出の通りですが、秋の収斂し冷たく寂しくなる様子に、悲しみや憂いなどの感情がおこりやすくなります。悲しみ・憂いの情志は肺気を消耗するといいます。悲しみや落胆のあまり声が消え入りそうになる、声が出なくなる、息がか細くなることなどは見受けられることですね。

 

⑩経絡でつながり大腸と表裏の関係にある・・・大腸についてのお話は後日にしますが、肺と大腸の関係を昔の人は臨床経験から知っていました。肺に炎症がある高熱のときに、排便により解熱させることや、大腸がんが肺に転移しやすいことなどについてです。

 

 

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