介護疲れでストレス?弁証論治トレーニング②
弁証論治①はうまくいきましたか? 自分や家族にもよく見られる症状だと、つい頭が勝手に先回りしてしまい、そこに書かれていない症状を思い込みで付け加えてしまうことがよくあります。

書かれていることは全て一つ一つ丁寧に分析し、全部を合わせて最後にどの証に当てはまるかを考えます。また、たくさんある証の名前を覚えていないと、つい自分の知っている証に無理にでも当てはめてしまいがちです。慣れるまでは、きちんと手順を踏んで繰り返し練習することが、結果的には自信につながります。
ふだんからいろいろな人をこっそりと観察し、弁証の練習をしてみることをおすすめします。
症例
47才・女性、専業主婦。診察日 3月10日。3年前から同居の母の介護をしている。1年前から胸のつかえ、肝区に脹れるような痛みを感じ、ため息をすると楽になる。胃にはいつも同じところに痛みを感じ、温めると緩和される。舌質淡紅、舌苔薄白、舌辺に瘀点、脈弦。
分析
45才→中医学では女性は7の倍数で、体に変化が現れるとしており、(7×5=35才からを中年期)更年期の症状が現れるころと推察される。加齢により体が虚してくる。
3年間介護生活→ストレスを感じている可能性がある。
胸のつかえ、肝区(脇肋)の脹痛、ため息で緩和→肝気鬱結の症状。
胃の固定痛、舌の瘀点→胃・肝の血流が停滞し、瘀血が生じている。温めて緩和するのは、気の巡りが改善するため(気血同行)。
舌質・舌苔→正常の範囲内。
脈弦→肝気鬱結の脈象、弦脈は肝胆病証によくあらわれ
弁証
以上のような分析から、ストレスの蓄積が原因と思われる肝気鬱結証と、肝の疏泄が失調して血流も滞ったことによる気滞血瘀証が考えられる。「気血同行」であり、気滞と血瘀が一緒に現れることは多い。
立法
疏肝理気、理気活血(どちらでもよい)
初級者の場合、立法はどちらかが答えられればよいが、瘀点や固定痛と記述があれば瘀血があると分っているので、活血は入れた方がなおよい。疏肝理気活血でもよい。
よく使う食薬
理気類・・・オレンジ・蜜柑・金柑など柑橘類の実と皮、玉ねぎ、ニラ、トマト、そば、薤白、陳皮、ジャスミン、玫瑰花、金針菜など。
活血化瘀類・・・青梗菜、酢、慈姑、紅花、桃仁、川芎、ウコン、ターメリック、益母草など。
ポイント
よく使う食薬を見ると冷たいデザートが作れそうですが、気血の流れが滞ったときは、基本的には温めて流れをよくします。調理法に気をつけましょう。
弁証施膳
『三花飲』
材料:ジャスミンティー小さじ1、玫瑰花5個、紅花2グラム。
作り方:急須に材料を入れて熱湯を注ぎ、お茶として飲む。
「二花飲」という疏肝理気解鬱のお茶レシピに、活血化瘀の紅花を加えて三花にしました。甘みが欲しいときは何を加えますか? ちなみに白砂糖は清熱類、黒砂糖は温裏類、ハチミツは補気類に分類されますョ。
今回の症例は、気滞から瘀血を生じたものと思われます。まだ程度の軽い血瘀と考えていいでしょう。
気の巡りをよくするものには香りのよい(強い)ものが多くあります。食べるだけでなく、バスタイムなどを利用して、アロマのよい香りに包まれることも効果的です。ふだんから、ストレスをためないように工夫することはとても大事です。
方剤
活血化瘀・行気止痛には「血府逐瘀湯」が広く使えます。胸中血府血瘀と、肝鬱気滞にもっとも合うので、今回のように胃痛がある場合は、丹参や鬱金を加味するとよくなります。
つまり、そのように細かく指定しないまでも「血府逐瘀湯加減」「柴胡疏肝散加減」「丹参飲加減」などとするといいでしょう。
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