弁証論治トレーニング・はじめに


弁証論治(べんしょうろんち)とは疾病に対する認識と治療の基本原則のことです。

中医学の特徴の一つで、独自の診断方法と治療のシステムを表すことばです。

難しそうですが、西洋医学とは違う、中医学の視点で病気と患者さんをを診て、病気の原因、病気のある場所、発症に至る経緯、病気の特徴、今後の展開の予測、患者さんの体質や既往症などを総合的に診断することが「弁証」です。

そして、中医学の定める治療の原則に基づいて治療方針を決めることが「論治」です。

中医学では弁証論治、薬膳学では弁証施膳といいます。

これから薬膳師や中医師の勉強を始める人や、資格試験を受けようと思う人は必ず理解してできるようにならないといけない必修科目ですネ!

Wokandapix / Pixabay
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はじめに「病」「症」「証」の違いを知っておきましょう。

「病」は名前のある疾病そのものを指します。例えば感冒・糖尿病・虫垂炎などです。

「症」は疾病の発生や進行の途中で現れる個別の症状です。例えば悪寒・頭痛・咳・痛みなどです。舌診などで見てわかる症を症状といい、だるい・頭が痛いなど見えないが感じている症を症候と分けることもあります。

「証」は証候ともいいますが、個別の症状や症候を総合的に診断した結論のことです。中医学では疾病がどんな「証」なのかを判断することが求められます。

このため、四診といって医師が患者の様子や症状を目で見て、鼻で嗅いで、耳で聞いて口で質問して、手で触れて、疾病の発生原因から疾病が関わる臓腑、疾病の性質、変化進行の過程をくわしく分析することが求められます。

精密な診断機器のない時代に、膨大な数の臨床経験を重ね考察することで疾病の本質にせまり、治療方法を確立していった中国の「知の遺産」に対して、本当に畏敬の念を感じます。

また、古代からアジアの国々では肉体を傷つけてはならない(たとえば髪を切らないなど)という思想があり、解剖学が発展しませんでした。このような思想が、四診などの診断方法を高度に発展させたとも

考えられます。

 

次に論治とは、弁証によって「証」が決定した疾病に対し、治療の原則に従って治療方法を論じることです。

たとえば冬に悪寒・発熱・咳の症状がある風寒証(冬のカゼ)と弁証されると、邪気を取り除く祛邪が治療原則で、具体的に風寒の邪気を取り除くための疏風散寒という方法が治療方法になります。

中医学では「同病異治」「異病同治」の方法が用いられます。例えば同じカゼという疾病でも、冬のカゼと夏のカゼでは治療原則が同じでも治療方法が違い、使う中薬も違います。

また頭痛の場合、冬のカゼによる風寒頭痛には生姜湯(生姜と黒糖)をすすめ、打撲による頭痛には田七人参をすすめるというケースも「同病異治」です。

「異病同治」では、例えば高血圧の人と貧血の人は違う疾病ですが、頭痛・耳鳴り・寝つきが悪いなどの症状に対して同じ中薬を処方することがあります。

また疾病の治療の過程で、進行や変化の状態に合わせて治療方法が変わっていくこともあります。

 

総括すると弁証論治とは、四診で得たさまざまな症状を総合的に分析し証候を判断し、治療原則に従って治療するということです。

 

薬膳では弁証施膳といい、やはり弁証によって治療法を決め、患者の年齢や性別、体質、生活環境なども見極めて適切な食材・中薬・調理法を選び、健康の増進と維持、疾病の予防と治療をする料理を提供します。

 

弁証をするにはいくつかのアプローチの方法があります、病気を、違う視点から診ることにより、証の名前が少しづつ違ってきて戸惑うことがあるかもしれません。でも弁証する手順はいつも同じです。いくつかやってみると自信がついてきますョ!これからご一緒に練習しましょう(^▽^)/

2018年12月「国際薬膳師脳になる! 弁証論治トレーニング」を出版しました。詳しくは下記の記事をご覧ください。

http://saikoko.com/2018/12/07/弁証論治トレーニング本 出版します。/

 

 

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