悪寒発熱、鼻づまり…弁証論治トレーニング①


第一回目の弁証論治トレーニングです。症例は、カルテのように書かれています。

症状の1つ1つを丁寧に分析して、どうしてそうなったか?を理解して、覚えられるようになりましょう!

 

症例

25才・女性、診察日2月1日。ここ数日、屋外での仕事が続いていた。昨夜から悪寒を感じる、体温38℃、頭痛、鼻水が水のよう、鼻づまり、のどが痛痒い、咳、体がこわばるようで少し痛い、無汗、食欲はない、舌質淡紅、舌苔薄白、脈浮数、大小便は正常。


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分析

季節は真冬→寒邪(冷える症状をひきおこす邪気で、収引性や凝滞性の特徴を持つ)ここでは自然界や外部からの邪気の侵入の疑いがある。

悪寒発熱→悪寒は、体を守っている正気と、邪気が体の表面近く浅い部分で戦っておこるので表証と考えられる。悪寒は表証の特徴の一つ。

一般的に発熱より悪寒が強いと風寒表証、悪寒より熱が強いと風熱表証と考えられる。

頭痛→風邪は軽陽開泄の性質で、頭面部・上半身を侵しやすいという特徴がある。軽陽開泄とは、風が高く舞い上がる様子、扉をパタパタと動かすように毛穴や腠理を開かせることを表す。

または、この頭痛は寒邪の凝滞性により、気血の流れが阻滞されることによるとも考えられる。

鼻水・鼻づまり→風邪が侵入すると腠理がゆるみ、体表をめぐる衛気が傷み肺の呼吸機能が乱れ、宣発粛降が失調。

のどが痛痒い・咳→同上。

鼻水が水のよう→寒邪の疑い。

体がこわばるようで少し痛い→風邪が皮膚や経絡に侵入し、気血の流れを阻害し、肝が筋を司れない。または、寒邪の収引性により曲げ伸ばしがしづらいと考えられる。

無汗→表実証。正気が虚しておらず、邪気と強く戦うと、腠理が緊張するため。

食欲がない→カゼひきの症状。気血は一時的に、体表近くに向かい邪気との闘いが優先されるため。

舌質淡紅・舌苔薄白→正常の範囲。まだ病邪が体の浅い位置にある。

脈浮数→浮脈は表証、数は熱があることを示している。

大小便は正常→正常の範囲。まだ邪気が体の奥深くにまで侵入していない。

 

弁証

以上のような分析から、風寒表証、風熱表証(八綱弁証による)、風寒犯肺証(臓腑弁証による)のいずれかの証であると考えられる、一般的な冬のカゼひきにあたる。真冬の屋外で風寒の邪気を感受したことが原因と思われる。

立法

風邪・表証に対しては、解表を施す。症状の現れ方によっては、宣肺、清熱、止痛など臨機応変に組み入れるべきだが、ここでは鼻、のど、咳など肺に関わる症状が多いので宣肺を選ぶ。

立法は辛温解表や宣肺解表となる。

 

よく使う食薬

辛温解表類・・・ネギ、生姜、紫蘇、香菜、茗荷、三つ葉、桂枝など。

辛涼解表類・・・薄荷、菊花、桑葉、葛根、牛蒡子、淡豆鼓(市販の豆鼓ではない)など。

温裏類・・・唐辛子、花椒、胡椒、ニラ、黒砂糖、肉桂、乾姜、小茴香など。

化痰止咳平喘類・・・桔梗、杏仁など。

ポイント

冬のカゼなので、体を温める温裏類を組み合わせてもいいでしょう。咳や痰がつらいときは化痰止咳平喘類も使います。解表類は葉や花のように薄くて軽い質感のものが多いです、湯薬やお茶として使うときは長く煎じては揮発性成分の効果が薄れるので注意が必要です。料理に入れるときも後から加えることがあります。


弁証施膳

ネギと生姜のお粥

米1/2カップ、生姜3片、白ネギ1/3本程度、水。

生姜はよく洗い皮付きのまま薄く切る、ネギは大きめに切る、洗った米と合わせて10倍粥に炊く。

 

 

どうですか?つまらないぐらい簡単ですね。でも、風邪のひき始めってどうしていますか?水分をしっかり取りながら、温かくしてよく休む…ですね。

このお粥は、辛温解表類で発汗させて風寒邪気を追い出す考え方です。薄く、水分たっぷりの熱いお粥はその薬効をより高めます。

早く元気になってほしいからと、栄養のつく肉や魚、芋、カボチャなど具だくさんの雑炊やうどんを作りたくなりますが、邪気を追い出そうとするときに、体を補うものを使うと「塞ぐ」作用があるため逆効果になります。

またカゼはひき始め2~3日の短期間に対処するのですから、虚弱になっている人でなければ、快方に向かい自然と食欲がでるまでは大丈夫ですョ。

このような解表類は発汗が大切です。ですが大汗ではなく、じわっと汗ばむ程度にします。汗をかき過ぎるとかえって消耗してしまうので注意しましょう。

汗をかいたら着替えるなどをして、体が冷えないように気をつけよく休みましょう。主婦の方は家事を休めませんが、炊事で水を使うと思いのほか冷えますのでカゼをこじらせないようにしてくださいネ。

 

方剤

冬のカゼには「桂枝湯」をまず選びます、風寒表虚証(脈浮緩、有汗)に最も合います。風寒表実証(脈浮緊、無汗)には「麻黄湯」が合います。

なお「桂枝湯」は傷寒論の第一方剤とされていて、食材で構成された優れた方剤といわれています。この薬を服用した後、熱い粥を飲むと効果を高めると記されています。

 

 

 

 

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